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「──それでね、ディバインバスターを波状光線にして発射しようと思ったんだけど、エクステンションみたいに 巧く行かなくて……シューター系じゃ威力が届かなくて駄目っていう状況になると、どうしても砲撃系ってなっちゃうし」 「ディバインバスターは砲撃魔法の中でも唱え易さに比べて効果が高いからね、逆に術式のプログラムが綿密なんだ。 今度その時組み立てた術式のソースを見せてくれないかな。実際に術式を見ると、もっと深く突っ込んでアドバイス 出来ると思うから」 「うん。明日の教習でも緊急避難時の障害物撃ち抜きをやるから、ユーノくんに渡す分のプログラム、空組みして レイジングハートに保存しておくね。明日、メールに添え付けして送っておくから」 「どうしても術式組成の時点で躓いてしまうなら、その段階からレイジングハートに頼ってみたらどうだろう。 なのはは術式の組成もそうだけど、詠唱の方の適性が低い訳じゃないんだから」 「う~ん、それも考えたりするんだけど、何でもかんでもレイジングハート任せだと、レイジングハートの処理機能も 不安だし、レイジングハートが直ぐにヘトヘトになっちゃうよ」 「そう、だから役割を逆転させるんだよ。レイジングハートに十割術式の組成を、なのはも弾道、照準、消費魔力、 そういった詠唱シークエンスを十割」 「あっ……」 「レイジングハートは頭のいい子だから、入力術式さえ間違っていなければ殆どの魔法の術式はちゃんと構成して くれるから。後はなのはの腕次第だね」 ユーノの間近にある通信画面越しのなのはの顔が、漸く難題の解答を編み出した学生の如くパッと明るく輝く。 「あーっ、それは全然頭に浮かんで来なかったよ~。そっか、そうだよね! ……あはは、やっぱりユーノくんは凄いね」 照れて頬を赤らるなのはに矢庭に明け透けな事を言われ、ユーノはどう応えていいかわからずに苦笑いを返した。 十四歳として相応に発育したなのはの女性的な身体は、時空管理局の制服が几帳面に着衣されている。対するユーノは 厳密には局員待遇の民間人として、局内施設である無限書庫の中でも好きな服装で上下左右に無重力空間を移動していた。 ユーノがフワリフワリと際限の無い本棚の前へと赴くと、なのはの通信画面も彼に追行する。 「ユーノくん、沢山魔法の事知ってるからって……教導隊の学科でも、教官として即戦力になれるって事務本部長が 仰ってたよ」 嘘か真かはさて置き、ユーノはそれに対して何も言及しないでおいた。確かに学力的な面では、そこそこの成績を 残して学院を卒業した。なのはには黙っているが、なのはやはやてが意外だと驚嘆する事でも、ユーノを始め 魔法社会で暮らす魔導師にとっては取るに足らない一般常識であったりも多々ある。 なのはは魔法に関して、熟練の局員さえ舌を巻く類稀なる才能がある。それははやてにも同じ事が言える。 先天的に魔法の資質を得ていた二人の少女。だが先天性というものは、如何とも改変をし得ない固着された ステータスと置き変える事も出来る。 物理法則が現象を支配する管理外世界ならば、地球の古典思想であるゼノンのパラドクスも論弁次第で正当性を 継ぎ接ぎにして形に出来るが、魔法という極めて事象に緊密な不確定要素が混入されると強ち頷けない。 畢竟して、魔法において先天性はあくまで、己の手で獲得した訳でもない単なる偶然程度に認識されている。 更に彼女達には生まれながらに魔法と接して来た訳ではない──習慣的に魔法と触れ合って来た経験が無い── そうした観念上の欠点が明確に内在している。 時空管理局という組織に所属して初めて、なのはもはやても才能だけでは社会の荒波に生き残れないと 身に沁みて思い知っていた。現在も海鳴市での一般学生と局員の二束の草鞋を履いている以上、そうした諸々の 事情もあるし殊更に魔法学院へ編入したいと言える立場ではない。 教育分野としての魔法への理解を補う為に、なのはは事ある毎に師匠でもあるユーノへ学術的な魔法理論の 講師を頼んでいた。飲み込みの早いなのはに、ユーノは人に教えるのが特別得意ではないが、彼女が教え甲斐の ある生徒であるのは実感している。 はやても守護騎士四名の他に、この文弱明敏な青年とも教師と生徒の関係を築いているらしい。先日とある筋から それを小耳に挟み、内心なのはは面白くない気持ちを抱いているが、それは微々とも顔に出さない。 彼女自身に自分の陰ながらの努力を口止めされているのか内情は皆目わからないが、若しユーノの口から「実は はやてにも色々質問されているんだよ」と冗談半分に話題にされたら、なのはもこの漠然とした胸の靄を 晴らせるのだろうが……義理堅いユーノが他人を第三者との会話で持ち出す真似はしないのをなのは自身も よく知っている。 だから、なのはは何と無く面白くない。ユーノが自分の手の届かない場所に、自分が介在していない秘密を 持っている事に幾許の煩悶がある。それは決して恋愛感情とまでは行かない、どちらかと言えば双子の片割れが 相手との精神的な距離に拗ねる、極めて本能的な嫉妬だった。 自然な、素直な感情の行き着くところにある、なのはの思春期真っ只中な女の子らしいユーノへの自己顕示欲 というものだ。自分だけを認めて欲しいと熱願する、師匠と弟子の関係らしいユーノに対する独占欲だった。 「ねぇユーノくん、フェイトちゃんと連絡取ってる?」 ユーノは今度の学会で発表する論文作成の為の資料を選別しながら、眼鏡の奥の瞳をなのはの顔へ横目にした。 「週に何度かメールを送っているんだけど、フェイトからは何も返って来ないんだ。若しかしてなのはも?」 悪い予感が現実のものとなり、なのはは愈々表情を強張らせて小さく首肯した。毎日宿舎に戻って寝る前に フェイト宛てにメールを送信しているが、今回の教習で無人世界に滞在してから一度もフェイトと何らかの伝達手段 でも接触していない。 「家とか他の人の番号はちゃんと通じるの。フェイトちゃんだけ……わたしだけじゃなくて、ユーノくんもなんだ」 だがその点にもなのはとユーノは奇々怪々な印象を、互いに打ち明けず隠し持っている。高町家の人々やその他の 地球の知友各位にフェイトの話題を出してみても、何故か文面や通話を介して微妙にはぐらかされてしまう。 まるで何者かがなのはとユーノの携帯電話の送信情報を接収し、相手に成り済まして返答を作成しているかの様な 不気味さだった。 「携帯電話の故障や、管理局の方の電波調整で異変があった訳ではないみたいだね。フェイト側の携帯が壊れてるのかな……」 空間に浮かび上がっている画面の中のなのはが、妙な寒気を感じて瞳を翳らせる。 「フェイトちゃん、皆と元気にしてるかな。フェイトちゃんに逢いたいよ……」 不意に寂しげに微笑んだなのはを、ユーノも痛ましげな顔で穏やかに見守った。 / 今朝、アルフと喧嘩した……。 フェイトは寝不足の所為もあり、授業の内容に少しも追いついていなかった。今の彼女の頭にあるのは、 ひたすらに今朝のアルフとの口論の想起だけだった。 リンディが数日の間だけ家を空ける事になった。フェイトは携帯電話が寿命を迎えた事故を口実に、思い切って 最新のNAVIと携帯電話をせがんだ。リンディは数少ないフェイトからの子供らしい要望を向けられ、どこか 嬉しそうにしていた。 ……だが、リンディは持ち主の手で故意に破壊された携帯電話の存在に気付く事も無く、時空管理局の方へと 出張していった。 その日から、フェイトは新たなる電脳世界へと旅立っていった。内密に買い寄せたミッドチルダ式の電算機器規格の NAVIを組み立てた日から、フェイトはワイヤードへ接続しない日は無くなった。加え、その依存度は日毎に深刻に なっていくばかりだった。 昨晩はつい夜更かしをしてしまっただけ。アルフにNAVIの導線を引き抜かれ、気が付けば朝陽が部屋に射し込んでいた。 アルフも最近のフェイトのワイヤードに入り浸る不摂生に鬱憤が溜まり、今日でそのたがが外れてしまったのだろう。 何よりフェイトが肝を潰しているのは、そんなアルフの断行に返した自分自身の言動だった。 フェイト、ゲームをやるななんて言わないけど、ちょっと加減ってものを考えた方がいいんじゃないのかい? 放っておいてよ! いいところだったのに、どうしてそんな意地悪するの!? フェイト? 出てって! 今すぐ部屋から出て行ってっ! ちょっ……フェイト、フェイト! うるさい! アルフなんて大嫌い! 時計やらハンガーを投げつけて追い出したアルフとリビングで顔を合わせるのが辛く、今日のフェイトは制服に 着替えると部屋の窓からそそくさと飛行魔法で登校して行った。 帰るのも疎ましい。もうあの家の誰とも逢いたくない。きっとクロノもリンディもエイミィも、アルフと同じ様な 意地悪をする。 (なのはもユーノもはやても、メールを返してくれないのは本当は私の事が嫌いだからなんだ。嫌いなら嫌いって ハッキリ言ってよ。みんなで私を無視するなんて、酷いよ……) 貴方だってどうでもいい造り物の癖に この世界に存在している事に何一つ意味を見出せないんでしょう? ……そうだね、千砂 全部貴方の言う通りだったよ 私なんて、この世界の何処にも居場所なんて────── じゃあ、ほら……早くこっちにおいで ここには神様がいるんだよ うん 今すぐそっちに行くね そこにあるんだ、私の誰にも惑わされる事の無い楽園が──── 教室で半ば忘我として椅子に座るフェイトは、加速度的に熱を帯びていく思考に何もかもを委ねていた。 根拠の無い妄想だけが、フェイトの中で緩慢に膨張を進める。 ワイヤードに没入する反面、フェイトの中で自家や身近な人間関係に対する無意識的な乖離が生じていた。 そしてフェイト自身が、そこに何ら危機感を抱いていない。寧ろ、現実の煩わしい雑事から遠ざかっていける 開放感さえ感じていた。 引き出しの中に両手を突き入れ、フェイトはその手に持っている携帯電話を神経質そうに弄る。この冷や冷やした 感触を味わうだけでも、彼女は気持ちだけはワイヤードの住人になれていた。 「どうしたのバニングスさん?」 前方の教壇から発せられた女性教師の声で、フェイトは反射的に顔を上げた。アリサが挙手をしている。傍に 歩み寄った女性教師と何か小声で話し合い、女性教師はアリサから何事かの同情を顔色で示す。 「それじゃあ……」「すずか、フェイト、ごめん、一緒に保健室まで来てくれない?」 「え……」 フェイトは前触れも無く指名され、間誤付く。すずかがアリサの体調の訴えと、その奥に秘められた真意を 目聡く受け止めて起立した。すずかからも視線で促されたフェイトは、教師の眼を盗んで携帯電話を制服のスカートの ポケットに仕舞い込み、慌てて二人を追って廊下に出た。 アリサが突然不調を訴えた原因は同性ならば容易に推定が可能なので、フェイトも心配そうにアリサの傍ですずかと 一緒に保健室を目指した。 階段の踊り場に差し掛かった所でアリサが立ち止まり、ケロっとした表情で自分に振り向いた時、フェイトは 訳も無く心臓を鷲掴みにされた様な圧迫感を強いられた。 「ねぇフェイト、最近あんた変だよ」「ア、アリサちゃん……露骨過ぎるよ」 フェイトはこの踊り場を三人の密談の舞台にする為にアリサが仮病を使った事を今更に察し、フェイトは俄かに 呼吸を乱して二人から眼を逸らした。授業中の廊下は不自然な程に酷く静かだった。 アリサが一歩フェイトに歩み寄り、顔を突き合わせる。アリサの嫌味の無い図々しさが、今のフェイトには他人を 赦さない領域も侵されてしまいそうで不快感を覚えた。昨日の放課後だって、NAVIの拡張機器だとか何だとか行って、 一緒に遊びにいく約束ほったらかしにしたよね? あたし達と一緒に居るの、そんなに楽しくない?」 習い事を多く抱える身として、数少ない放課後の自由時間を友達を過ごすのを平日の僅かな楽しみにしている アリサにとって、最近のフェイトは裏切りにも等しい事を続々としてくれている。 「そ、そんな事」 フェイトは弱々しく項垂れ、努めてアリサと眼を合わせない。疚しい事は無い筈だが、どうしてかこのアリサの 詰問がフェイトにはとても堪えられなかった。 「新しい機種に変えたから、珍しくて気になっちゃうんだよね?」 すずかが穏便に仲立ちをするが、アリサとフェイトからそれぞれ寒暖の激しい無言が返るだけだった。 「岩倉さんだって急に別人になったみたいに明るくなったし……近頃、何かがおかしいと思う訳」 「たとえば……?」 すずかが慎ましい中立的な立場に佇み、この場が険悪な雰囲気に包まれないか不安げに二人を見比べている。 「何もおかしくはないよ」 アリサとすずかが、何故かしら衝撃を受けてフェイトに視線を集める。二人の耳朶に触れたフェイトの声は、 澄んだ響きを有していながら判然としない汚濁を含んでいる。 フェイトが二人の視線を真っ直ぐに受け止める。当惑してフェイトを見詰めるアリサとすずかは、フェイトの 歪に笑んだ顔付きに不鮮明な悪寒を感じ取る。 「大丈夫だよ、私。なのはがいなくったって、私はもう寂しくないから」 「別にあたし達はなのはなんて一言も口に出してないけど?」 揚げ足を取って来たアリサに、フェイトは意志の疎通が正常に行われていないかと疑わせる微笑みを浮かべた。 4 互いの誤解を浮き彫りにした重苦しい沈黙が漂う踊り場に、場違いに軽快な着信音が鳴り響く。フェイトが咄嗟に スカートのポケットから携帯電話を取り出し、画面を開く。 自分達と接している途中にこうして余所の用事に気を向けられるのは、アリサは殊に癪に障る相手の行動だった。 すずかもアリサの張り詰めた憤慨を敏感に感じながら、しかし表立って指摘出来ない。画面内容を確認して喜色満面の フェイトに、彼女はアリサの疑念に同感する面持ちをしていた。 「ごめんアリサ、すずか。私、ちょっと行かなくちゃ。強敵と遭遇したみたいで、今のメンバーだけじゃ太刀打ち 出来ないんだって」 「ふぅん、またゲーム?」 見当違いな事を喋って来たフェイトへ、アリサは怒りの沸点を突き抜けそうに眉を痙攣させる。話の内容が、 フェイトがすっかり入れ込んでいるファントマというオンラインゲームのものであるのは、アリサとすずかは知る由も無い。 二人の友人の制止も聞き入れず、フェイトは授業中も構わずに階段を駆け下りていく。 「フェイトちゃん……」 すずかは音も無く胎動する不安を紛らわせる為に、掌を胸元で握り合わせる。視線を落とした階段には、まるで 現実世界から消え去ったかの様なフェイトの残影だけが朧気に散らばっていた。 息を弾ませながら階下手洗いの個室に立てこもり、フェイトは改めて携帯電話の画面を目前で開く。仲間への 返信メールの文章を打つ間のフェイトの眼は、鬼気迫るものがあり他者を寄せ付けない閉塞感が如実にあった。 携帯でログインするから、少しパラメータ低下されるけど参加していい? オーケーオーケー! Aliciaさえ来てくれりゃどんな敵も一撃だって! えへへ、そんな事無いよ 今何人? 四人 Alicia早く来てくれってば マジヤベェ どんな敵なの? いやー多分新規ダンジョンなんだろうけどさ、見た事無い敵なんだよ ダンジョン名はScaglietti labって……Aliciaは知らないよな? うん んで、まぁレアアイテムあるかもしれないって中を探索してたんだけどさ そうしたら遭遇した相手と今 交戦してるんだよ 人型で数匹いるんだけど、どいつこいつも普通の敵じゃねぇぜ でもAliciaのパラメータなら勝てるって 敵の名前は? それが表示されないんだよ 兎に角、話は奴をぶっ倒してからにしようぜ! そうだね もしかしたら、向こうもユーザーかもなぁ 最近ファントマで事件あったろ? あいつ倒したらどっかの街で 死者が……とか起きないよな? 向こうの動き、CPUとは思えない精緻なものなんだよな 向こうもこのダンジョンを 探索してるのかも んな訳ねぇだろ そうやって少数事例を持ち出して全体を叩くのはマスコミだけだぜ メールでの情報交換を止め、フェイトは携帯電話のワイヤード接続機能を入力して行く。 高精度の電脳仮想空間へ意識を転移させる瞬間の、この平衡感覚が薄らぐ五感の狭窄が心地好かった。 「え? スカリ、エッティ……ラボ?」 どこかで聞き知った単語を上の空で呟いたフェイトだが、しかし目先に展開されていく仮想の極楽の誘惑に負けて 一抹の疑問を思考の届かない奥底へと封印した。 「──コネクト、ワイヤード」 To Be continued 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 第十六話「危機」 なのは達は広場を歩く。 綺麗な木々、心地よい木漏れ日と風。 けど自分達はその場所で狩りをしている。なのはの手には相棒「レイジングハート」。 背中に背負っているのはジェイから受け取った。「鬼神斬破刀」。 「死なないで…。」 涙をこらえて歩いた。 私達が去った今、彼はおそらく生と死の境をさまよっているはずだ。 できることなら狩りなんてやめて今すぐ彼の元へ走りたい。駆けつけたい。 でも戻ったら彼はなんて言う?おそらくどうして戻ってきた、と自分をしかりつけるだろう。 だから早く終わらせてあの人の所へ向かおう。命が途切れてしまう前に。 「…あまりそう悩みこんでいると、戦闘に支障がでるぞ。」 ヴィータちゃんがそう言い聞かせてくる。 顔を見るとやっぱり悔しいみたい。表情が歪んでいる。 スバルとティアナだって同じだ。…そうだ、気持ちは皆一緒なんだよね。 だったら皆で、力を合わせて終わらせよう。そして早く命を繋ぐんだ。 ふと地響きが響く。その先にはティガレックスの姿があった。…さぁ、始めようか。 大きな咆哮。それはティガレックスもこちらを確認したということだ。 すぐさま突進。なのはが手で散らばって、と合図をするとスバル達は一斉に四方八方に逃げた。 横を通り過ぎたと思うと足でブレーキをし、またこちらに突進してきた。それも避ける。 それを数回繰り返すとやっと止まる。自然にティガレックスは囲まれる形に。 「一斉攻撃!!」 まずティアナとなのはが射撃、続いてヴィータとスバルが突進するという単調なもの。 しかしこの囲まれた状態だと避けるのも一筋縄には行かない。問題はティガレックスがどう動くか、だ。 ティガレックスは跳躍してティアナとなのはの攻撃を避ける。ここまでは予想範囲内。宙で無防備になっている巨体を狙うのが目的。 ここからの動き、なのは達の予想を超えた。 スバルがウィングロードを展開させてリボルバーナックルを唸らせる。 「うぉおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 突き出した拳を、ティガレックスは受け止めた。そして握り、後に突進してきたヴィータの方へと遠投。 二人とも巻き込まれ地面へと落ちた。 「うわぁぁぁっ!?」 「あぁぁぁぁぁ!!」 ティガレックスが着地する寸前にティアナとなのはが攻撃。しかしそれもダメージを与えることはなかった。 着地の寸前に腕を軸にして体を回転させて双方からの攻撃を綺麗に避けたのだ。 数回回転してから止まり、なのは達に軽く咆哮をあげた。 ふたたび砲撃を繰り出すが跳躍して避ける。しかしなのはは宙に舞うティガレックスの真下へと潜り込み 「ディバイィィィィィン…バスタァァァァァァッ!!」 太い桃色の閃光、ディバインバスターを放った。ティガレックスはそれを回避すること叶わず。 巨体は閃光の中へと飲み込まれていった。だがこれで終わったわけではない。それはなのは達も十分にわかっていることだし 何より相手の力量から見て、残念だがこれぐらいでティガレックスがやられるとは思わない。 後方に地響き。その方向に向くと身体の所々が赤くなり、鼻息を荒くさせたティガレックスの姿。もう一度、ヤツの逆鱗に触れた。 だが怯まず、二度目のディバインバスターを放つが今度はバインドボイスで生み出された衝撃波とぶつかり合い、消滅した。 ティガレックスはディバインバスターとバインドボイスのぶつかった衝撃てダメージを受けているみたいだが、 この状態になると魔法による攻撃はダメージは与えられるがそれほど期待はできない…と考えたほうがいいだろうか。 しかし、今の自分に魔法以外の攻撃なんて……否、ある。顔を横に向けて背を見るとそこには鬼神斬破刀。 …かけてみるしかない。鬼神斬破刀に手をかけ、ゆっくりと鞘から引き抜いて構えた。 「…まいったな。意外と重いんだね。これ。」 苦笑して自分の手に握られている太刀を見る。 今度はレイジングハートを見て 「悪いけど、鞘に入っててもらえるかな?」 「All right(了解しました。)」 レイジングハートをストン、と鞘に収めて鬼神斬破刀を両手で握る。 ヴィータが心配そうに見つめてくるがなのははニコリと微笑んでからティガレックスを睨むだけ。 …もう、やるしかないんだ。そう心の奥で誓うように。 まず地面を蹴って前進。後ろでスバルやティアナ、ヴィータが自分を呼ぶ声が聞こえるが、振り向かない。 自分は剣など扱ったことはない。だけど今は引き返せない。ジェイが剣を振っている姿を脳裏で思い出した。 「まず…!」 彼は敵の隙を狙う。ティガレックスは前脚を振り上げた。それでできた隙を狙えばいい。 鬼神斬破刀を横になぎ払い脇を切り裂く。その次に突き、肉を穿つ。 それだけではなく深く突き刺さった刃をゆっくりと横へ、横へ。腕が震えてるのは中々斬れない、という証拠だ。 ようやく動き出したティガレックスはその巨体を回転させる。吹き飛ばされるなのはだがすばやく体勢を立て直し、名を叫ぶ。 「スバル!」 「でぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁっ!!」 なのはのすぐ横を鋼の疾走者、スバルが通り過ぎる。ティガレックスの横を走り、スバルを追わんと視線もそちらの方へ向く。 スバルも、名を叫ぶ。 「ティアナ!」 「クロスファイア・・・・シュート!!」 ティアナの放った魔法弾が先ほどなのはが傷つけた箇所へ直撃、爆発を起こす。激痛に怯むティガレックス。 今度はティアナが、叫ぶ。 「ヴィータ副隊長!!」 「いけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 怒りの鉄槌、グラーフアイゼンがティガレックスの背中に振り下ろされる。よほどの衝撃に地面が砕け、巨体が完全に地に沈む。 そして最初に攻撃していった者の名を。 「なのは!!」 「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 鬼神斬破刀の刃を振り下ろした。刀身が深く傷へめり込んでいる。動かなくなる巨体を前になのはは少し離れて様子を見る。 数秒、数十秒、一分。やはり巨体は動かない。ここにきてやっとなのはは深呼吸して肩の力を抜いた。 そう、終わったのだ。と。今まで与えたダメージが重なって相手も疲労し、満身創痍だったのだろう。 やはり生命を絶ってしまった不快感はどうやっても拭えない。ちょっとでも紛らわせるために早く彼の元へ向かおう。 安堵感に満ち溢れている皆の顔を見回す。 「じゃあ、早くジェイさんのところに行かなきゃね!」 こうしては居られない。皆一歩踏み出した瞬間、足元が暗くなった。 後ろを振り向くともう動けないはずのあの巨体。妖しく、赤く光る目でなのは達を睨む。 驚くのもつかの間、ティガレックスがなのは達へと、飛びかかってきた。 ざわめいていた木々から鳥達が一斉に飛立つと、不気味なほどの静寂がその場を包んだ。 一方、先ほどの広場から離れた場所にて 「…これで完了ニャ。まったく、あの状態でいきなり調合するとは思わなかったニャ!!」 「すまないなぁ。相変わらずいにしえの秘薬はすごいよ。あんな酷い怪我が数分で治っちまった。」 青年、ジェイはストレッチをしていた。血まみれでひどい有様だった腹は完全に回復していた。 彼が使ったのは『いにしえの秘薬』。飲むと回復薬とは比べ物にならないような回復力を持つ薬だ。 これを飲むと怪我が完全に回復する上にスタミナまで完全に回復、しかも以前よりも増加しているという驚くべきもの。 それゆえに入手方法は難しく、調合でできるとしてもかなり成功率は低い。 幸い彼は調合を上手くできるようになる本、調合書を最後の一冊、達人編まで持っていたためかろうじて作れた…というわけである。 「はい、これが完成した『アレ』ニャ。」 「へぇー…。思っていたよりも綺麗にできてやがる。さ、防具防具。アカムト装備壊れちゃったからね。」 アイルーが差し出した二振りの剣を握り、軽く振るう。何度も頷いて吟味した後防具を要求。 しかしアイルーは非常にやりづらそうな表情をしている。 「どうした?早くくれよ。」 「それが…シャーリーさんに興味がある、調べさせて欲しいって言われたからジェイのマイセット1の装備をしばらく貸してて… 返してもらったらこうなってたニャ…。」 アイルーが箱から取り出した装備はかつての防具の姿とはあまりにもかけ離れ、機械的に改造されていた。 ジェイは無表情で口をあんぐりあけながら数秒見つめる。 その後頬を何度も叩いたりつねるなどのリアクションをして、もう一度その装備を見るが変わるわけがない。 「OK,これが俗に言うデバイスってやつ?」 「そ…そうみたいだニャ…。」 ちなみに、彼らはデバイスとはどういうものかイマイチわからない。 「帰ったら一発ぶん殴っとくか。でもま、今は感謝しようじゃないの。」 今はわがままを言っている余裕はない。さっさとその装備をつけて双剣を背中に背負う。 アイテムポーチの中に入っているアイテムを確認するとアイルーに別れを告げ、走り出した。 なんでも、彼の走りは以前のよりもかなり速度が上がっていた…とそのアイルーは言う。 「自分で決めたんだ…最後までやるさ…!!」 自分に向けたのか、それとも他の誰かに向けたのかわからない。 だがその言葉を口にした彼の目は、自信に満ち溢れていた。 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第四話「忠勝と予言、そして鬼」 「ククク・・まさかこんなデータが手に入るとはねぇ・・・。」 とある地下にある研究所。ここで紫の髪に白衣を着た男性、ジェイル・スカリエッティは立っている。 彼の目の前にはモニターに映し出されたなのは達六課メンバー。そして、本多忠勝。 「こんなものが六課にあったとは・・いやいや、流石の私も驚いたよ。」 本多忠勝の映像だけがアップになり色々な項目が浮き出る。スカリエッティはふむ、と唸る。その顔はまさに純粋に何かを楽しむ子供の様。 そんな彼の横に薄い紫の髪の女性が現れる。ナンバーズの1番目、ウーノだ。 「ドクター。これをどうするおつもりで?」 「ククク・・・久しぶりに別の方向に研究意欲が向いてきたよ!!」 長年付き添っているウーノはその言葉だけでドクターがこれから行おうとすることが理解できた。 「ではドクター、材料はどうするおつもりで?」 「そんなもの、何かで代用すればいいだけのこと!クククク・・・ハハハハハハハハハ!!」 高笑いをして研究所の奥へと消えていくスカリエッティ、その後をついていくウーノ。 誰もいなくなったその一室に本多忠勝のモニターをじっと見つめる隻眼の少女が立っていた。 その少女が思うはモニター越しに見える強者への期待。自然と腕がうずいてしまう。 いつしか対決するであろう強者に思いを膨らませ、隻眼の少女は立ち去る。 「もし戦うことがあれば・・・私の期待を裏切ってくれるなよ・・。」 少女、チンクの呟きが響いた。 所変わってここは聖王教会の廊下。 その場所にはなのは、フェイト、はやてという隊長三人。その後ろには何故か忠勝がいる。 時々刺さる視線が痛い。 「じゃあ、入ろうか。」 はやてがノックするとドアが開き、奥からフェイトより少し薄い金髪の女性が現れた。 「失礼します。高町なのは一等空尉であります。」 「フェイト・T・ハラオウン執務官です。」 二人が背筋を伸ばし、敬礼をする。金髪の女性はそんな二人に対して優しく微笑む。 「いらっしゃい。はじめまして。聖王教会教会騎士団、騎士、カリム・グラシアと申します。どうぞ、こちらへ。」 そう案内されて三人は奥のテーブルへと案内される。テーブルの椅子には一人の黒髪の男性が座っていた。 「失礼します。」と言ってから二人は席に座る。 「クロノ提督、少しお久しぶりです。」 「ああ。フェイト執務官。」 クロノと呼ばれた男性はその威厳のある表情のまま、フェイトと挨拶。 そんな二人を見てカリムはクス、と笑った。 「二人とも、そう固くならないで。私たちは個人的にも友人だから。いつもどおりで平気ですよ?」 カリムの言葉にクロノは「やれやれ」といった表情をする。 「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで。」 「平気や。」 「じゃあ、クロノ君、久しぶり。」 「お兄ちゃん、元気だった?」 フェイトの言葉に一瞬クロノはドキッとして、それから少し照れた表情に。 「それはよせ。お互いいい年だぞ?」 「兄妹関係に年齢は関係ないよ。クロノ?」 「・・・・」 クロノの抵抗の言葉にフェイトはさらりと対処。クロノは肩を落とす。 そんな二人の姿を見て、つい笑みがこぼれてしまう。 「あれ?忠勝さんは?」 なのははもう一人いないことに気づく。その人は何故かここに連れてこられた忠勝だ。 「忠勝さーん。入ってきていいんだよー?」 忠勝とは誰か?日本名であることを考えるとなのは達の友人なのだろうか?とクロノとカリムは思う。 しかし入ってきたのは想像を真っ向から打ち破り、いや、砕いた黒い鎧の巨人。 しばらく流れる沈黙。「あちゃー」という表情をするなのは達三人。一方の忠勝はもう慣れたみたいだ。とりあえず頭を掻いておく。 「な・・何なんだ?このミスター質量兵器は?」 「えっと・・・六課脅威のメカニズムや!」 「違うでしょ、はやてちゃん。えっとね、こちらは本多忠勝さん。私達に協力してくれている人なの。」 「というか人なのでしょうか・・・?」 まただ。自分を見るその視線が痛い。こんな姿を主に見せられない。戦国最強も形無しである。 フェイトがコホン、と咳払いをすると喋れない自分の代わりに自己紹介をしてくれた。 「この人は本多忠勝さん。なのはやはやての世界の戦国時代からこの世界に飛んできたんだって。とっても強いんだ。」 いや魔法を使える貴殿らのほうが十分強いですよと言いたくなったが喋れないので心の中にしまっておくことにした。 お辞儀をすると二人も頭を下げて返してくれた。 「でも忠勝さん・・でしたっけ。連れてきたんですか?」 そこは自分も気になってたことだ。納得のいく答えを期待しているぞはやて殿。 「うん・・六課にいるから、クロノ君達にも会わせておかんとなーって。」 来客や外部の者には会わない約束をしたような気がするが忠勝は堪える。 苦笑するクロノとカリム。 正直それからの話は忠勝は自分に関係ない話だったためあまり覚えていない。 唯一気になることがあるならば予言の「崩れ落ちる鉄の城」というフレーズだ。その言葉を聞いた時忠勝は寒気を覚えた。 まさか自分が死してしまうのだろうか?不安になってきた。そして「白銀(しろがね)の城」。 自分の意思を継いでくれる者がいる・・ということだろうか? どうしても不安がぬぐえないまま六課に戻った。 自室に戻ろうとするとはやてに呼び止められた。 「あの・・忠勝さん。カリムの予言の崩れ落ちる鉄の城・・・って忠勝さんも感じてるとおり・・貴方だと思うん。」 俯いて言いにくそうに言葉を口にするはやて。忠勝は何もせず、黙って聞く。 「でも・・・あれは割りとよく当たる占い・・ってカリムも言うてたし・・第一・・・ウチや・・ウチ等六課メンバーが・・そんなことさせへんから!」 振り絞って出した言葉。言い切ったはやては少し呼吸を荒くしている。顔は俯いたままだ。 そんな彼女を見て忠勝は何も言えない。だから手を伸ばし、不器用ながらもはやての頭を撫でる。 「!」 もうちょっと鬼が島の鬼に男気・・というものを学んだほうがよかったな。と心底思いながら忠勝は自室へ戻った。 途中で金髪の子供と遭遇し、泣かれてエライことにはなったが。 また所変わり管理局地上本部。 窓辺に佇む中年の男と女性。 「連中が何を企んでいるやら知らんが、土に塗れ、血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中にいいようにされてたまるものか! 何より、最高協議会は我々の味方だ。そうだろう?オーリス?」 「はい。」 「査察では、教会や本局を叩けそうな材料を探して「ハァッハッハッハ!いけねぇなぁオッサンよぉ!」・・・誰だ?」 中年の男が振り向くとそこには銀髪に隻眼、上半身裸で巨大な錨みたいなものを持った男がいた。 「・・誰だ?」 「んなことより、オッサンのその性格を直したほうがいいぜ?反吐がでらァ。」 「何!?」 中年の男、レジアスの殺気を込めた表情をしばらく見つめ、男は鼻で笑う。 「権力とか、そういう事の前に部下を大事にしたり協力する・・・というのも必要だぜ?っとぉ、機動六課とやらの宿舎は・・あっちゃあ。えらく離れてやがるな。」 地図を眺め豪快に笑いながら背を向ける男。 「待て!!貴様は誰だ!!返答次第によっては貴様を・・・・」 言い切る前に男は殺気を込めた視線を送る。その殺気は先ほどのレジアスが放っていた殺気を遥かに上回るものだった。 思わず硬直してしまうレジアス。そしてまた豪快に笑い出す男。 「あんたに名乗る名前は鬼が島の鬼・・・ぐらいしかねぇよ。じゃあな!その六課とやらにお友達が待っているんでな!!」 男は巨大な錨の上に乗り、サーフィンみたいに滑りながら去っていった。室内で。 戻る 目次へ 次へ
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――ここは、ミッドチルダ郊外の、とある自然公園。その、広い広い草原の真っ只中。 ほんの少し前に、運命のいたずらから出会った、魔導師の親子と、奇妙な旅人の一行は、まだそこにいました。 陽は、少し傾き始めたみたいです。 しかし、彼らはまだ離れる気配がありません。 だって、 「ヴィヴィちゃ、ここだよー」 「えっ、何処どこ、ニジュク?」 「ヴィヴィちゃん、こっちだよー」 「えー、どこなの、サンジュぅ?」 子供達が、遊ぶことに夢中だから。 そんな子供達のことを、なのはとクロは、少し離れた所から半ば呆れつつ、でも優しく見守っています。 今、子供達は鬼ごっこの真っ最中。 と言っても、 「こんなに草の背が高いと、二人のこと見つけられないよー」 ヴィヴィオはとうとう、その場にへたり込んでしまいました。少し、ふてくされているみたいです。 確かに、生えている草の背は高いようですが、それでも、最も高いところでもヴィヴィオの膝から下くらいしかありません。 でも、 「ヴィヴィちゃ、あいとー」 「ヴィヴィちゃん、がんばー」 ヴィヴィオからそう離れていないところから、白い双子、――ニジュクとサンジュの声がします。 ただし、姿は見えませんが。 もしかしてあの双子は、透明になる力でもあるのでしょうか。――いえいえ。 「二人とも卑怯だよー。体ちっちゃくして、草の中に隠れるんだもぉん」 ヴィヴィオは口をとがらせて言いました。 そう、あの双子は体を小さく出来るのです。 何故か、着ている物も小さく出来るのですがね。 「えへへー」 「あそびでもしんけんにやれって、センゆってた」 「だから、しんけんに、つかまらないようにするの」 「だからって、卑怯なものは卑怯なのっ!」 ちょっと得意げな双子の声に、ムッとなって叫ぶヴィヴィオです。 「わーい、おにさんおこったー」 「にげろ、にげろー」 双子の声が、ヴィヴィオから離れ始めます。 ガサガサと、音を立てて離れます。 「こらー、ふたりとも逃げるなーっ!」 両腕を振り上げて、ヴィヴィオはまた、ニジュクとサンジュを追いかけ始めました。 そんな子供達の様子を、ベンチくらいの大きさの岩に腰掛けて見守っていた、大人二人。 「やれやれ……」 と、クロは嘆息し、 「三人とも……」 なのはは頬に手を当てて苦笑。 「何で、あそこまで元気に」 「本当、走り回れるんだろう」 ずっと、こんな調子の二人である。 「でも、ま、そうは言うけどよ」 二人の背後から声がした。 「あの三人がここで思いっきり走り回ってるのって、結構幸運で、幸福な事じゃねぇの? 聞けば、ヴィヴィオちゃんもかなりやばいことに巻き込まれてたって話だし、 うちの二匹だって、下手すりゃあの屋敷でミイラになってたかも知れないしな」 それは、まだてるてる坊主にされている、センの声だった。 クロとなのはが、子供達について、その子達を見守りながら話しているのを耳にしての言葉でもあった。 「ものは考えようっていうのかな、俺達は今、結構幸せな光景を、見られてんのかも知れないぜ?」 「……ふむ」 クロは、右手で帽子の鍔を軽くあげ、 「そうかも、知れませんね」 なのはは軽く頷いて、 「センにしては良い事を言うね」 「おいおい、いつものことだろ、クロ?」 「でも、本当にそう思いますよ、クロさん」 「……同感です、実は」 二人と一匹は子供達を、微笑みながら見つめていた。 そんな時です。 不意に、とても強く、風が吹きました。 森が、激しくざわめきます。 「わあっ」 「なになに」 「すごいかぜなの」 思わず、ポンッ、という音を立てて元に戻った、ニジュクとサンジュ。 そして、白いものが舞い上がりました。 それも、たくさん、たくさんです。 「すごい……」 「しろいもの、いっぱい……」 「おそらに、あがってくの……」 思わず、ヴィヴィオとニジュクとサンジュは、空を見上げました。 空に漂う綿毛は、空の蒼さと相まって、子供達にはとても真っ白く見えました――。 【一期一会(作詞・作曲 中島みゆき)】 『見たこともない空の色 見たこともない海の色』 「……タンポポ、かな?」 「えっ、タンポポ?」 「ヴィヴィちゃ?」 「二人とも、初めて見るの?」 「「うんっ」」 『見たこともない野を越えて 見たこともない人に会う』 「タンポポ、ですね」 クロが呟いた。 「クロさんの世界でも、タンポポってあるんですか」 「ええッ。と言うか、この世界でも、これってタンポポなんだ。ちょっとびっくりだな」 『急いで道をゆく人もあり 泣き泣き 道をゆく人も』 「ぽわぽわ、とんでいくね」 「どこまで、とんでくのかな?」 双子はぽーっと見惚れています。 「ねえ、ふたりとも」 「「なに、ヴィヴィちゃ?(ちゃん?)」」 「タンポポ、飛ばしてみようよ」 『忘れないよ遠く離れても 短い日々も 浅い縁(えにし)も』 「そうですね、考えてみればびっくりかも」 「世間は狭いと言うけれど、『世界』も案外狭いのかな」 「うーん、……そう考えると、この世界とクロさんの世界って、意外と隣り合わせとか?」 「ふふッ。お互い、気付いてなかっただけだったり?」 「にゃはは。でも、それならそれで、とても素敵なことかも知れないなぁ……」 『忘れないで私のことより あなたの笑顔を 忘れないで』 「クロちゃ、これ、これぇー」 「しろい、ぽわぽわ、みつけたのー」 「ママ、ねぇ、飛ばしっこしよ、タンポポの」 子供達が、手に手に、小さな小さな綿帽子を持って、ニコニコしながら二人に駆け寄ってきました。 『あなたの笑顔を 忘れないで』 【歌 匿名希望のW・Hさん(女性)】 さて、そろそろ。 旅話の続きを、お話しするといたしましょう――。 「(すうっ)……ふぅ~~」 ニジュクとサンジュの目の前で、ヴィヴィオは綿毛を飛ばすお手本を見せます。 「「うわぁ……」」 ヴィヴィオの吹きかけた息に乗って、タンポポの子供達は舞い上がりました。 風は、まだ少し強めに吹いているので、思った以上に高く、高く、舞い上がっていきます。 先程の光景よりはささやかなものでしたが、ニジュクとサンジュにはやっぱり不思議に満ちた光景です。 「ヴィヴィちゃ、すごぉい」 「しろいぽわぽわ、とんでいくの……」 「えへへ、そうかな♪」 はにかみ笑顔な、ヴィヴィオです。 「 でも、二人にも出来るよ」 「そかな?」 「うん」 「できるかな?」 「簡単だよ、ほら、やってみようよ」 ヴィヴィオは、二人を促します。 「……うんっ」 「わかったの」 覚悟を決めた双子の顔は、真剣そのものです。タンポポを持つ小さな手に、力がこもってます。 「あの、二人とも、そんなに力まなくても、……あはは」 なのははそんな二人の様子に、微笑ましく思いながらも、苦笑いを浮かべ、 「ええっと、リラックスだよ、ニジュク、サンジュ?」 ヴィヴィオはあたふたと双子をなだめます。 「ふふっ、やれやれ」 そして、白い双子のいつもの様子に、黒い旅人はいつものように肩を軽くすくめた。 「じゃあいくよ、せぇの……」 「「「ふぅ~~~……」」」 三人の子供達は、一斉に綿帽子に息を吹きかけました。 「「うわぁ……」」 それに促され、また別のタンポポの子供達が舞い上がります。 その様子に、双子はやっぱり声を上げました。 でも、その大きく見開いた目の色は、今までとはちょっと違うかも。 「できた、できた♪」 「あたしたちにも、できたぁ♪」 「ほら、できたでしょ?」 「「うん♪♪」」 これぞまさしく満面の笑みという笑顔で、ニジュクとサンジュはヴィヴィオにこっくりと頷いたのでした。 でも、ふとニジュクは思いました。 「ねぇ、クロちゃ?」 「んッ、どうしたんだい、ニジュク?」 「どしてタポポって、しろいのかな?」 「えッ、ああ――」 「あっ、それあたしもおもった」 サンジュは、手を挙げて、ぴょんぴょんと跳びはねます。 「サンジュもかい? うーん、どうしてだろうねぇ」 少し困った顔で、クロは眼鏡をかけ直した。 そんなクロに、なのはが助け船を出す。 「じゃあ、色を付けてみようか、ニジュクちゃん、サンジュちゃん」 「「えっ?」」 ヴィヴィオはぽんと手を叩いて、 「そうだよ、二人とも、そういうこと出来るんだし」 「あっ」 「そだった」 そのことを思い出した双子は、傍らにあった綿毛を摘んで、思い思いの色を付けます。 ニジュクは、 「おはなのあおー」 サンジュは、 「はっぱのみどりー」 「捻りが無ぇー」 「「セン、うるさいっっ!!」」 双子の抗議に、今だてるてる坊主のセンは、韜晦して口笛を吹いた。 「いくよ、サンジュ」 「うん。せーの……」 「「ふぅ~~~~……」」 ――おや? 「とばないの……」 「どうしてかな……」 「もっかい、いくよ」 「うん、ニジュク」 「「せぇの、……ふぅ~~~~」」 ――うーん。 「やっぱり、とばない」 「なんでかな……」 双子の顔が、にわかに曇ります。 「「ねぇ、なのちゃ(ちゃん)、なんでかな?」」 二人は、なのはに尋ねました。 「な、なのちゃん……」 なのはの顔が、微かに引きつる。 「ママ、なのちゃん……」 ヴィヴィオは両手で口を押さえて、何かを堪えているみたいです。 「クックク、……おい、クロ、……取り敢えず後で、あの二匹に何か言っとけよ、……クククッ」 センは忍び笑いを漏らしつつ、傍の樹で手をついて笑いを堪えるクロに言った。 「――二人とも、そう言うことだから、この人のことは、 なのは『さん』と呼んであげなさい。それも礼儀というものだから。良いね」 ここしばらく、なのはのお世話になることを、クロは双子に、堪えきってから告げた。 「「あいっっ!!」」 二人は元気よく、手を挙げて答えました。 それから、なのはに、 「それでね、なのちゃ、……ちがった」 「だめだよニジュク。なのさんて、……あっ」 やっぱり、呼びにくいのでしょうか? 「にゃはは、――うん、わたしのことは、『なのさん』で良いよ、二人とも」 「いいの?」 「ほんとに?」 「本当だよ」 「ああ、すみません、なのはさん」 クロは申し訳なさそうに頭を下げた。 「良いんですよ、二人とも色々解ってくれてるみたいだし。で、飛ばないことを尋ねようとしたんだっけ、わたしに?」 「うん」 「なんでだろ」 「うーん、どうしてだろうね……」 なのはは言葉に詰まる。 いや、たぶん色を付けたことが原因の一つであろうことは、容易に想像はつく。 しかし、それだけでは何か今ひとつ説明がつかないような気がする。 色を付けても、綿毛は綿毛らしくあった。今もそうである。 (飛びづらくはなったんだろうけど、でも、あのふわふわした感じは残ってるし。……飛べ無いなんて、やっぱり無いよね) 正直、説明する言葉が見つからない。 (うーん、どう言えば良いんだろう……) 答えに、全く窮してしまった。 そんななのはの様子に、クロは何も言わずに頷いて、 「それは、きっと」 声をかけながら、二人に近づく。 「きっと、色を決められてしまったからじゃ、ないのかな」 「いろを?」 「きめられた?」 「どういうこと?」 ヴィヴィオも興味を持ったようで、身を乗り出してきました。 「うん。もっと正確に言うなら、『勝手に色を決められた』から、と言うべきかも知れない」 クロは、そう言うと足下にあった別の綿帽子をそっと摘んだ。 子供達は、ポカンとした顔で、クロを見つめています。 「ほら、彼らはみんな、このように綿のような真っ白い色をしているね」 「うん」 「そだね」 「それは、たぶん」 クロは、手にした綿帽子を、腫れ物に触るように、優しく撫でた。 「自分で、染まりたい色を見つけたいからじゃないかと、私は思うんだ」 その綿帽子を見つめる目は、限りなく穏やかで、優しい。 「だから、彼らは真っ白でいたいのさ、旅立つその時が来るまでは、ね」 子供達は、その言葉を聞いて、何かに気付きそうな顔です。 「たびを、するの、ぽわぽわ?」 「クロちゃんや、あたしたちや、センみたいに?」 「だから、風に乗って、飛んでいこうとするのさ」 「旅を、する……」 でも、どこかもどかしそうな顔もしているような気がします。 その時、なのはが、あっ、と小さく声を上げた。 「つまり、ニジュクちゃんとサンジュちゃんが色を付けちゃったことで、 二人の持つ綿帽子さんが、ええっと、その、拗ねちゃった、とか?」 クロは、「成る程」と微笑みながら頷いて、 「そう言うのも、あるかも知れませんね」 綿帽子を撫でながら、答えた。 「本当なら、色を決めるのは自分だから」 撫でながら、なのはを見つめた。 「私は、ニジュクとサンジュの綿帽子が、勝手に色を決められたことで悲しんでいるのじゃないか、 と思ったのですけどね」 そして、双子に目を落とす。 「旅に出る理由が無くなったから、ね」 その、クロの言葉に、ニジュクとサンジュはシュンとなりました。 「あたしたちのせい、なんだ」 「ごめんね、ぽわぽわ」 「そこまで気落ちすることもないさ。でも、そうなると、やることは解るよね」 「「うん」」 頷いて、二人はお互いの綿帽子に指を乗せます。 付けられた色が、その指にすうっと吸い込まれ、二人の指がそれぞれ青と緑に染まりました。 それから、二人はクロに綿帽子を預けて、渡されたタオルで手を拭きました。 そして、改めて渡されます。これで綿帽子も指も元通りの色です。 「よかったね、ぽわぽわ」 「ぽわぽわ、またまっしろだね」 風が吹きました。綿毛が飛び出せるほどのものではなく、軽く揺れる程度でしたが。 「何か、タンポポ、嬉しそうに見える……」 それを見て、ヴィヴィオが呟きました。 「気のせいかな?」 「違うよ、ヴィヴィオ」 「ママ?」 「きっと、本当に嬉しいんだよ、この子達は」 「……うん、そうだね、きっとそうだよ」 仲良し親子は、互いに微笑みながら、頷き合いました。 「じゃあ、そろそろ彼らも旅立たせようか」 「うん、そだね」 「たびさせようね」 「ヴィヴィオもやるよぉ」 「ではでは、わたしも……」 一匹を除いて、各々が手に手に綿帽子を持ちます。 「みんなー、準備オッケー?」 「うん、良いよ」 「「あいっっ!!」」 「いつでも、良いですよ」 ちょうどその時、風が吹きました。 遠くまで飛ばすには、良い風です。 「よーし、じゃあ行くよー。せーの……」 「「「「「ふぅ~~~~~……」」」」」 五人は、一斉に息を吹きかけました。 綿毛達が、一斉に飛び立ち、舞い上がって行きます。 「うわぁ……」 それを見て、サンジュが走り出しました。 「おーい、ぽわぽわぁー、げんきでねー」 手をふりふり、綿毛達を追いかけます。 「あっ!」 「あたしもっ!」 つられて、ヴィヴィオとニジュクも駆け出します。 「がんばれぇー、ぽわぽわぁー」 「自分の色、見つけるんだよぉー」 子供達は、手を振りながら、追いかけていきます。 「おーい、みんなー、あんまり遠くまで行っちゃだめだよぉー。もうすぐ帰るんだしぃー」 なのはは、苦笑しながら叫んだ。 「ははッ、やれやれ」 クロは、やはり苦笑しながら、頭を掻いていた。 「それにしても」 不意に、頭を掻く手を止める。 「ここのタンポポ、花の色は」 「えッ、ええ、種類にもよると思いますけど、大体が黄色じゃないか、と」 「ああ、やっぱりそうでしたか……」 ふう、と、クロはため息をついた。 「ほらを、吹いちまったな、クロ」 傍で枝にぶら下げられている、小生意気なてるてる坊主が言った。 「あの、ほら吹き男爵のことを……」 「そのことだけじゃないさセン、私がため息をついたのは」 「あン?」 「もし、仮に、綿毛達の旅が私の言ったような目的のものだったとして、 その行き着く先は、予め決められたものだと知ったら、どう思うのかな、って」 「……成る程。何か、お前らしいや」 「黄色な花しか咲かせられないと知って、彼らは――」 「大丈夫じゃないのかな、思うんですけど」 なのはが、子供達を見つめつつ、明るく言った。 「確かに、落胆したりするかも知れないけど」 そして、クロを見つめた。 「受け入れて、別の決意というか、夢を持ったりするんじゃないかな。えと、例えば――」 「例えば?」 「もっと、明るく、目立つような黄色で、咲いてやろう、とか」 「……ふふッ、そう言えば、ほとんどのタンポポって、とても明るい黄色で咲きますよね」 「だから、大丈夫」 クロに向かって、なのははにっこり笑って、大きく頷いた。 「みんな、そう言う強さを、持っているものだから」 そう言って、なのはは機動六課で過ごした日々を思い出していた。 (あの子達も、頑張ってるよね、今も) そして、クロをしっかりと見据えて言った。 「クロさんも、ですよ」 その言葉に、かぶっている帽子の鍔を持って、表情を隠すクロ。 ようやく見える口元は、微かにふるえているようだった。 やがて、その口元が弓状にしなり、 「なのはさんも、そうなんじゃないですか」 鍔を上げた顔は、にっこりと、優しく笑っていた。 「うーん、どうなんだろ?」 そう答えたなのはも、にっこりと笑っていた。 「ふふふ……」 「にゃはは……」 しばらく、笑いあっていた、二人。 「さて、お疲れでしょうから、そろそろわたし達の家にご案内しますね。でも、くつろげるかどうか、ちょっと解らないけど……」 「野宿よりは全くましですよ。泊めていただけるだけで、とても有難いことです」 「うわあ、何か、逆にありがとうございますって言わなきゃ、って気が……」 「いやいや、そんなことは……」 そして、また笑いあう。 「おーい、そろそろ帰るよー」 なのはが、綿毛達のことを手を振って見送っていた子供達に、叫んで声をかけた。 「はーいっ!」 「「いま、いくのーーっっ!!」」 子供達はなのはに向き直って、手を振って答えました。 「ふふっ、やれやれ」 そう呟いて、クロは樹に立てかけてあった棺桶を背負う。 陽は、傾きを増していたが、まだ、地平線に沈むまでには、至っていなかった――。 旅をする、と言うことは。 常に、希望と絶望が背中合わせのものであることを意識するものなのかも知れません。 しかしながら、それでも人は、旅する者は、それを続ける。 その先に何があるのかを知りたくて、続けるのでしょうか。 それとも、それを敢えて振り切ることが、続ける理由となっているのか。 もしかしたら、……それらに気付くために、旅を続けるのでしょうか。 『棺担ぎのクロ。リリカル旅話』 第二章・了 「あー、取り敢えずこの俺の拘束を解け。話は、それからだ」 あッ、忘れてた。 「ひどッ!」 戻る 目次へ 次へ
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第1話 魔導士とライダー 「ん・・・ここは?」 「・・・!?・・・」 剣崎と始が見たものはなんとアンデットが解放されていた。 「バカな・・・」 「まずい、早くアンデットを封印をしなければ。」 「橘さん達はどうする?」 「そのうち現れて合流する。今はアンデットを封印を・・・」 「わかった。変身。」 「・・変身」 「Turn up」 「Change」 剣崎たちに現れたアンデットは剣崎がコンボによく使うカードローカストアンデッド それと始があまり使わないカードプラントアンデッドだった。 一方橘達も・・・ 「橘さんこいつら・・・・」 「睦月、今は封印することを第一に考えるんだ」 「わかりました。」 「「変身」」 「Turn up」 「Open up」 橘達に現れたアンデットは、ジェリーフィッシュアンデッドとバットアンデッドだった。 そして、運命の出会いが・・・ 「ティア、あれなにかな?」 「ん?」 「どうしたんですか?スバルさんティアさん」 「なんか向こうの方で、誰かが戦っているような気がするんだよ~」 「!?ケリュケイオンが反応してるそれも魔力反応があります。」 「よーし。私たちも行こう。」 「ちょっとスバル。飲み物はどーすんの?」 「ん~。あとで取りに行くよ~。」 「あ~もう。あんた一人じゃ心配だからみんなで行くよ。」 「誰かに連絡とは・・ってスバルさんがいない。」 「はやっ」 「仕方ないな・・私がなのはさん達に連絡するから、エリオ、キャロ、スバルのこと少し頼むね。」 「「はい」」 「始・・こいつら下級アンデットなのにこんなに強かったか?」 「く・・・何者かがこいつらに強力な力を与えたらしいな」 「剣崎、始」 「橘さん、睦月、無事だったんですか。」 「ああ、それよりも、こいつら強いぞ。」 「やばいな・・・こいつらが町に出たら、被害が広がるな。」 「そんな、ってここが何処か分からないんですよ。」 「それは人がいたら聞くんだ。睦月、危ない。」 「!?っっ」 「リボルバーァァァァシュゥゥゥゥト」 突如青い玉がバットアンデットに当たった。 「睦月大丈夫か?」 「はい。大丈夫です。今のは?」 「俺じゃない」 「じゃあ、誰が?」 「私です。」 「ん?君は?」 「私はスバル・ナカジマといいます。助けに来ました。」 「助けか・・・まあ、とりあえずこちらが有利になるといいな・・」 「クロスファイアー・・・シューーーーート」 「フリード、ブラストフレア」 「キュルルルル」 「ファイア」 「ソニックブーム」 「はああああ」 「あ、ティア、エリオ、キャロ着てくれたんだ。」 「「はい」」 「スバル、状況は?」 「んとね、こいつらを倒すの」 スバルが指しているのは、アンデット達である。 「わかったわ。あとなのはさんはこれないけど報告だけはしてっていってたわ。」 「OK。」 「よし。こいつらを倒すのありがたいがあとで、この場所とかを聞きたいがいいか?」 「はい。大丈夫です。」 「「アブソーブクイーン」」 「「フュージョンジャック」」 「よし、みんな一斉攻撃だ。」 「「ああ。」」 「「「「はい「」」」」 「わかりました。」 「サンダー、スラッシュ」 「バレット、ファイアー、ラビット」 「フロート、ドリル、トルネード」 「バイト、ブリザード」 「ライトニングスラッシュ」 「バーニングショット」 「スピンニグダンス」 「ブリザードクラッシュ」 「デバインバスタァァァァァァァ」 「ファントムブレイザー」 「紫電一閃」 アンデット達は倒しそして・・・ 「始、橘さん、睦月、今のうちに封印を・・」 「「ああ」」 「はい」 そして、アンデットは封印された。 「ありがとう。君たちのお陰だよ。」 「い、いえ///」 「そういえば、ここはどこだ?」 「あ、ちょっと待ってもらえますか?」 「いいけど・・」 (なのはさん、聞こえますか?) (どうしたの、ティアナ?) (あの、ちょっとそっちに連れて行きたい人たちがいるんですが、そちらに連れてってもいいですか?) (ん~はやて部隊長に聞いてみるから) (はい) 「はやてちゃん」 「ん?なんやなのはちゃん」 「ティアナがここに連れて来たい人たちがいるんだけどいいかな?」 「ええよ。もしかしたらさっきの魔力反応のことも聞きたいし」 「わかった。ありがとはやてちゃん」 (ティアナ、いいよ連れてきな) (はい、ありがとうございます。) 「あそうだ、みんなの名前聞いていないね。」 「そういえば、そうですね。」 「俺は剣崎一真。よろしく」 「俺は橘朔也だ。一応この中でリーダーをやっている」 「た、橘さん、それ、いつ決めたんですか?」 「今だ」 「剣崎そんなことはあとでで、いえ。・・相川始だ・・」 「そうですよ。いまの状況を考えてください。上城睦月です。」 「では、剣崎さん、橘さん、相川さん、上城さん私たちについて聞ください。」 「ああ、わかった。」 「その前に、変身を解除してないな」 「そうですよ。」 「SPIRIT」 カリスはハート2を使い、ブレイド、ギャレン、レンゲルはバックルを戻した。 「よし、行こう。」 「はい」 戻る 目次へ 次へ
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「一体…何のためにこうやってやり直させたんだ!」 「知る必要は無い。お前達の戦いは、何も変わらない。ただライダー同士で殺しあうのみだ」 令子達が誘拐された事件、その結末には大きなイベントが残されていた。 13人目にして最強の仮面ライダー『オーディン』が現れるという事態である。 真っ先に彼に向かっていったヴィータはすぐに殴り飛ばされ、他のメンバーも次々と殴り飛ばされた。 ただ一人、龍騎はタイムベントの前の記憶が残っていたため一撃を入れることに成功するが、それも全くダメージを与えられない。 そして龍騎が殴り飛ばされ、今に至るというわけだ。 「いや…変わったよ」 「何?」 「重さが…消えていったライダーの重さが2倍になった!これ以上は増やさない!」 その言葉とともに、龍騎が立ち上がる。 「人を守るためにライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!」 「城戸…」 龍騎の言ったことを聞いていたのか否か、オーディンはすぐに去っていった。 「私と戦うのは最後の一人だ。続けろ。戦いをやめるな」 「看護婦さん、フェイトちゃんはまだ…?」 「ええ…まだ目は覚めてないわ」 数日後、海鳴大学病院。今日もなのはとはやてはフェイトの見舞いに来ている。 体のケガはほぼ完治しているが、目は未だに覚めていない。それが今のフェイトの状態である。 「そう…ですか…」 やはり残念そうだ。もしかしたら、既に目が覚めていて、驚かせるためにわざと眠っているふりをしているのではないか。 そう思いたくもなったが、現実は非情。フェイトは未だに目が覚めない。 「あ、もうこんな時間や。そろそろ帰らな…」 時計を見たはやてが言う。現在の時刻は五時。子供はそろそろ帰る時間だ。 「あ…そうだね。それじゃあフェイトちゃん、また来るね」 そう言ってフェイトのいる病室を出る二人。 帰り際、なのはが見覚えのある人間…秋山蓮を見かける。 こんな時間に病院に何の用…いや、考えるまでもない。一般人の病院への用といったら、見舞いか診察のどちらかしかない。 「…はやてちゃん、悪いけど、先に帰っててくれない?」 蓮の用事が気になったなのはは、はやてに先に戻るよう言う。 「別にええけど…どないしたん?」 「ごめん、ちょっと用事ができちゃって」 「ふーん…分かった。ほなな」 なのはの用事とやらを深く追求せず、そのまま病院の出入り口で別れた。 残ったなのはは蓮の後をつける…もっとも、バレバレだが。 第二十一話『星と虎の邂逅』 蓮は今、彼の恋人…小川恵理の病室にいる。 小川恵理は数ヶ月前、蓮がライダーになった日からここに入院している。 その日は神崎士郎によるミラーワールドの実験の日。その被検体が恵理だったのだ。 そして実験は成功。ミラーワールドからモンスターの一体…ダークウイングが引きずり出された。 そのダークウイングが放った超音波により、恵理は意識不明となり、今も眠り続けている。 そしてその日、迎えに来ていた蓮が事件に鉢合わせしたのだ。 その時は怒りに任せ、神崎を殺そうとした。だが助ける手段…ライダーとして戦うという手段を知り、神崎からカードデッキを受け取った。 その日から蓮はライダーとなった。恵理を救うために。ダークウイングと契約したのも、恵理を喰わせないためだ。 「恵理…」 恵理の名を呼んだ。やはり反応は無い。 ふと心電図に目をやる。どうやら問題は無いようだ。 …と、鏡から音…いや、ダークウイングの鳴き声が響いた。まるで「餌をよこせ」とでも言っているかのように。 蓮はその発生源の鏡を見つけ、思い切り拳を叩き込んだ。鏡が砕けるのと同時にダークウイングが去る。 その後、帰り道にて。 あの後なのはは蓮に見つかり、事情を聞いた。 モンスターによる意識不明の恋人。それを救うための戦い。それが蓮の戦う理由。 蓮の戦う理由を知ったなのは、その足取りは重い。 「レイジングハート…他のライダーの人達も、蓮さんみたいに大事な理由で戦ってるのかな?」 不意になのはが足を止め、口を開いた。 『…でしょうね。おそらくは神崎士郎の願いに賭けるしかなくなった人達、それがライダーとなったのでしょう』 「そう…だったら、私達に戦いをやめさせる資格なんてあるのかな…?」 今のなのはには迷いがある。人を殺してでも叶えたい願い、その中には蓮のように「大切な人を救いたい」というものがあるのだろう。 それを諦めさせてまで戦いをやめさせる資格があるのか、それがなのはの迷いだ。 すると、レイジングハートが口を開いた。いや、口は無いが。 『ならばマスター、あなたは他の12人を犠牲にすることを肯定するのですか?』 「そんな事は無いよ。ただ…」 なのはがそれを言い終える前に、言葉が中断されることになる。 キィィィン… 「! レイジングハート!」 『All light.Barrier Jacket standing up.』 その頃、清明院大学401号室では。 キィィィン… こちらでも例の金属音が聞こえる。というのも、なのはの帰り道の近くにこの学校があるからだ。 こちらではミラーワールドを閉じるための研究をしているというのは前述の通り(第十話参照)。 それを面白く思わない神崎士郎は、たびたびモンスターを送り込み、ミラーワールド封鎖を阻止しようとしている。 そして今回もまた然り。すぐ近くにモンスターが現れた。 「やれやれ、また…ですか」 香川が呆れ果てたような声で呟く。しょっちゅうの事なのでもはやモンスター襲来は止まらないと半分悟っているようだが。 「そろそろ東條君が向かっているところでしょうか…まあ、彼に任せるとしましょう」 香川はそう言って、研究を再開した。事実、近くにいた東條がこの反応の元であるモンスターの元へと向かっている。 この後、魔法少女と虎のライダーの接触があることを、今知っている者はいない。 高速でなのはの元へと飛ぶ、緑色のモンスターが一体。名を『ガルドミラージュ』という。 ガルドミラージュはなのはを視認しると、背負った圏と呼ばれる投擲武器を投げつけてきた。 ミラーワールドへと入ったばかりのなのははそれに気付かない。 『Protection Powered.』 レイジングハートの張ったプロテクション・パワードでようやく気付く。 幸い自動防御で何とか防ぎきれる程度の威力だったから返すことはできたが、その時に隙はどうしても生まれる。 そして生まれた隙を狙い、爪での一撃が飛んだ。それを紙一重でかわす。 「速い…それに、入ってきたのと一緒に撃って来た…」 『おそらく、神埼が本気で潰しに来たのではないでしょうか。 それならば、入ったのと同時に仕掛けてきたのもうなずけます』 ガルドサンダー、ガルドミラージュ、ガルドストームの三体は、神埼が従えるモンスターである。 それがここにいたということは、誰かを消すためだろう。 そして、入ってきたと同時にかかってきた説明もつく。始めからターゲットとして指定した相手が寄ってきたら、すぐさま仕留めようとするだろう。 「それって…前にフェイトちゃんが言ってた理由なの?」 『おそらくは』 『ライダーの戦いを邪魔する者達』、それが神埼から見た魔導師達の認識である。 その邪魔をさせないために、他のライダーにも警告を発したらしいが、今の時点ではそのライダーからの襲撃は無い。 …となれば、神崎が手駒を使い、始末に乗り出したとしても何ら不思議ではない。 …今はそんなことを言っている場合ではない。ガルドミラージュに対処すべき時だ。 「…今はそんな事言ってる場合じゃないよね。レイジングハート!」 『All light.Restrict Lock.』 捕獲魔法『レストリクトロック』をガルドミラージュの軌道上へと仕掛ける。それから一秒と経たない間にその区域へと入ってきた。 現れた光の輪がガルドミラージュを捉え、動きを封じる。 それを確認し、フラッシュインパクトで叩き落とし、アクセルシューターでさらに追撃。 「やった!?」『いえ、まだです』 ガルドミラージュはまがりなりにも神崎の手駒だ。アクセルシューター数発で沈むほどヤワではない。 下からガルドミラージュの圏が飛来する。それを何とか避けるなのは。 だが、それこそがガルドミラージュの狙いだった。600km/hの飛行速度を利用し、なのはへと迫る。 慌ててフラッシュムーブで避け、地上にある森へと逃げ込む。それを追ってガルドミラージュも森へと飛び込んでくる。 しばらく森の中で、空を飛びながらの鬼ごっこが続く。するとなのはの目の前に大木が見えた。 「あった!」 大木を見つけ、自分の狙った手を実行に移すなのは。その手とは、なるべく大きな木の手前で急上昇するという手だ。 これほどの速度ならば小回りが利かず激突する。なのははそうにらんだ。 そして作戦通り急上昇する。ガルドミラージュは狙い通り激突し、その場にダウンする。 後はとどめをさすのみだ。上空からバスターモードで狙いを定める。そして… 「ディバイィィーーン…バスタァァァーーーーー!!」 『Divine Buster Extension.』 上空からディバインバスターの光が飛ぶ。その光はガルドミラージュを飲み込み、そして消し去った。 『お疲れ様です』 「ふぅ…」 ガルドミラージュを仕留め、地上に降りて一息つくなのは。 「それじゃあ、帰ろっか?」 『そうですね。そろそろ戻らないと、心配かけるかもしれませんし』 そう言って帰ろうとするなのは。だが… 「…えっ?」 無数の羽――さしずめ羽手裏剣といったところか――が飛来し、なのはを木に固定した。 近づいてくる羽手裏剣を放った張本人。それは先ほど倒したガルドミラージュ同様、神崎士郎の手駒であるモンスター『ガルドストーム』だった。 「まだいたの…?」 なのはは、今回現れたモンスターは先ほど倒したガルドミラージュだけだろう、そう思い込んでいた。 だが実際は違う。目の前にガルドストームがいるのがその何よりの証明だろう。 そのガルドストームが斧を構え、なのはへと走る。 羽が抜けず、固定されたままのなのは。覚悟を決めたのか、目を閉じた。 …だが、斧がなのはの身を裂く事は無かった。 おそるおそる目を開けると、斧を持った虎のようなライダーが…タイガが目の前にいた。 「仮面…ライダー…?」 戻る 目次へ 次へ
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Round ZERO ~MOONLIT BEETLES ◆7pf62HiyTE ――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼を照らしていた。 「嫌な月だ――」 金居はそう呟く。 昨日と同じ変わらぬ満月――自分達参加者以外には人も動物も虫もいない異常な空間――それはこの場所が作られた空間である事を意味している。 その場所に放り込まれて一方的に殺し合いをしろと言われて良い気などするわけがないだろう。 C-9、ジェイル・スカリエッティのアジトより北方数百メートルの位置に金居はいた。 放送前、プレシア・テスタロッサからの要請でアジトに集結するであろう対主催集団を崩壊させろと指示を受けていた筈の金居はアジトに向かう事無くその場所で待機していた。 プレシアの指示を無視? 確かに最終的に遵守するつもりはないが、現状で刃向かうメリットなど少ない。では何故か? 実際の所、アジト周辺に到着したのは放送開始前だった。上空から確認した所アジトには2人の参加者が既に到着していたのが見えた。 両名とも自身にとって未知の人物であった為、この2人と接触し攪乱もしくは殺害する事を考えてはいた。 だが、やはり上空から確認した所、ヴァッシュ・ザ・スタンピードと八神はやてがアジトに向かってくるのが見えていた。 そして、実際に地上に降りた後、アジトに近付こうとしたタイミングではやてとヴァッシュが到着。結果として接触のタイミングを逃してしまった。 その後、連中に気付かれない様にアジトから離れたという事だ。幸い再会での盛り上がり、及び放送が流れてきた事で周囲への警戒が多少緩んでいたため自分の存在には気付かれていないだろう。 そして、双方共に確認出来ない場所まで移動し周辺への警戒は怠らず待機していたという事だ。なお、只待っていても意味など無い為砂糖を舐めながらである。 何故、4人の集団に接触しなかったのか? それは金居自身にとって少々分の悪い賭けだったからだ。 金居、ヴァッシュ、はやては共に激闘が繰り広げられたホテルアグスタにいたがその場所から先に離脱したのはヴァッシュとはやてだ。金居はジョーカーこと相川始と戦う為その場に残った。 その後、金居と始は激闘を繰り広げたがそこにエネルとヴィヴィオという金居でも手を焼く強敵が乱入した事で金居は2人をジョーカー、そして始の戦いを見届けるため残ったはやての部下スバル・ナカジマに任せる形でホテルより離脱した。 金居が戦いに加わる前、始は既にスバル、ヴァッシュ、そして柊かがみと戦っていた。その決着については始が紫髪の少女を倒しヴァッシュとスバルを助ける形で終わった。そしてヴァッシュとスバルは始を仲間として迎えていた。 始の正体は最強最悪の存在ジョーカー、ギラファクワガタムシの祖であるギラファアンデッドである金居から見ても人類から見ても敵でしかない。だが、事情を知らないヴァッシュ達が理解出来なくても仕方のない話ではある。 つまり、もしこの場でのこのこ自分が現れた場合、始やスバルを置き去りにした事でヴァッシュやはやてから不要な疑いを掛けられる可能性が高い。少なくても始が封印された事は事実なのでどちらにしても警戒される可能性は高いだろう。 そもそもホテルを経ったタイミングが遅い筈なのに同じタイミングで現れるというのも違和感を覚えさせる要因だ。 幾らプレシアの要請とはいえ、金居にとっては不利な要因が大きい。戦いになったところで負けるつもりは無いが、後にキングとの戦いが控えている以上消耗は最小限に抑えたい。 故に現状は下手に介入せず近くで待機する事が最善と判断したのだ。時が経ち状況が変われば介入するタイミングも見えるだろう。 とはいえ、ただ無駄に待つ事をプレシアは望まないだろうし金居としてもそうするつもりはない。 故に金居は先を読み一手仕掛ける事にした。そう、金居の手元にあるガジェットドローン5機を利用するという事だ。 頭に命令を思い浮かべるだけで実行するそれは金居にとって強力な武器だ。金居は手元の5機にある命令を送り現在位置よりから北方向へ飛ばしたのだ。無論、アジトからは確認出来ないように。 その命令は『各種施設の探索及び破壊』、『施設に向かった参加者の殺害』である。 何故、ガジェットをアジトで繰り広げられるであろう戦闘で使わず遠くの施設に飛ばしたのか? 勿論手元に密かに置いておく事で隙を作るメリットは確かにあった。しかし一方でガジェットを所持しておく事で不要な警戒を招く危険性もある。 故に全てのガジェットを手元から離す事でその疑いを避けるという手法も有効だという事だ。 幸いガジェットへの命令は頭で思い浮かべるだけで済む為、集団でいる所でガジェットに自分以外を襲う様にし向けても自分が命令元だと悟られる可能性はさほど高くはない。 さて、先の命令を送った理由だが、それは対主催集団の次の行動を読んでの事だ。 アジトに集った参加者は次はどうするのか? おおかた首輪解除に向けて工場等他の施設に向かうだろう。 また、アジトで戦闘が起こった場合も他の施設へ待避する事も想像に難くない。 つまり、先手を打つ事で連中の次の手を潰し仕留めるという事だ。対主催の妨害になっているのならば少なくてもプレシアから文句を言われる筋合いは無いだろう。 北を見ると火の手が上がっているのが見える。どうやら工場が炎上しているのだろう。ガジェット達はちゃんと仕事をしているという事だ。 「これで首輪解除の手段が1つ潰れたな」 その最中、金居は今後の事を考える。放送からある程度時間が経過した。このタイミングならば連中の前に姿を現しても疑われる可能性は大分低くなる。 とはいえ絶対とは言い難い、残り人数は自身を含め12人。彼等の情報を今一度纏め直したい所だ。 まず元々の敵とも言うべきコーカサスビートルアンデッドキング、厳密に言えばここで決着を着ける必然性も無いが奴の性格上自身の目的の障害になる可能性が高い故、戦いは避けられない。 そもそも最後の1人になるまで戦う事を偽装するならばキングとも戦うという事は当然の理だろうし金居もキングと戦う事については異存はない。 幸いこの場では時間停止が行えない事は確認済みなので戦いになっても自身が圧倒的に不利という事はないだろう。とはいえ自身と同じカテゴリーKである以上その実力は互角、どういう状況になるにせよ極力自分優位に持っていきたい所だ。 次に仮面ライダーカブトこと天道総司、ライダーに変身出来ないならば戦力的に問題は無いが変身出来るならば厄介な相手だ。 また変身出来ない状況でもその能力は侮りがたい。味方だと入り込んだ所で自身の目的を看破される可能性が高いだろう。 続いてはやて、高町なのは、スバル、ユーノ・スクライア、管理局の4人だ。ユーノに関しては未知の人物だがはやてとなのは辺りに対してはある程度信頼を得てはいるが完全とは言い難い。 いや、以前仕掛けたカードデッキの仕掛を看破されたならばなのはからも警戒されている可能性も高い。どちらにせよ以前のように味方として接する事が出来るとは言い難いだろう。 またスバルに対しても彼女が始を信頼していた事などを踏まえ自分を敵と認識している可能性が高いだろう。ジョーカーが危険な存在であってもその脅威を知らない以上それも仕方がない。 続いてなのはの娘であるヴィヴィオ、ホテルでの戦いでは殺戮マシーン状態だったが、今現在は元の無力な幼女に戻った事を確認済み。故に現状警戒する必要はない。 次にヴァッシュだ。先の戦いを見た所その実力は確か。同時に人格面でも殺し合いを良しとしない事は明白。自分の事をどう思っているかは不明瞭だが警戒しておくにこした事はない。 先のホテルで始達が交戦したかがみに対しては特別脅威ではないだろう。ライダーに変身するベルトは既にスバルが取り上げている。ベルトがなければ只の少女、大きな障害にはなり得ない。 もっともライダーに変身したところで始の変身したカリスに敗れている以上その実力は始以下、どちらにしろ問題はない。 泉こなた、アンジール・ヒューレーに関しては詳細不明、もしかしたらアジトで待っていた人物かもしれないがそうでない可能性もあるため言及は避けよう。 勿論、金居自身アンデッドや仮面ライダーはともかく人間程度に負けるとは思ってはいない。 しかし前にギンガ・ナカジマ及び始と戦った時、武蔵坊弁慶が盾にならなければ自分が敗れていた状況であった事を踏まえるならば人間を侮りすぎる事は愚行と言える。 そもそもエネルやアーカード、先のヴィヴィオと言った自身の戦闘能力を凌駕する連中が数多くいる事は認めたくはないが事実だ。どの相手に対しても油断せずにゆくべきだろう。 とはいえどんな強敵であっても倒す事が可能なのはこれまでの戦いが証明している。故にそれについては絶望していない。だが、それはこちらも同じ事、いかにアンデッドといえども倒される可能性を決して忘れてはならない。 一方で金居自身ある事が引っかかっていた。それは先の放送が定時より10分遅れだった事だ。金居にとってこれは重要な事である。 金居視点から見た場合、10分遅れた理由は放送前に自身との接触があり、自身が無事にプレシアの言葉に従い倉庫の中身を確保しアジトに向かうかどうかを確かめていたからと説明する事は可能だ。 しかし、今回に限っては説明出来てしまっては正直まずい。要するに10分遅れてしまったら、暗に何かあったのではと思案される危険がある。 つまり、遅れたのは『何か仕掛をしていた=金居と接触していた』と悟られる可能性があるという事だ。 わかりきった事だが金居としてはこれは非常に困る話だ。散々人に参加者殺せと言っておきながらその足を引っ張るのは如何なものか。 別にサポートしてくれとは言わないがせめて足を引っ張らないで欲しいと思う。 勿論、これ自体がプレシアが参加者を攪乱させる為だけという話も無いではないが、警戒される以上自分としては良い迷惑である。真意が何であれ自分に不利益な解釈をされかねない事は避けてもらいたかった。 「定時に出来ないのなら前の放送の様に誰かに変わってもらえば良かっただろうが……」 そう毒突く金居であったが、実際3回目の放送の様にオットーにやらせれば何の問題もない話なのは確か。自分との接触で遅れたのならば正直笑えない話である。 だが、プレシアもそこまで愚者だとは思えない。もしかすると自身との接触の段階では問題は無かったがその直後に何かあったという可能性は否定出来ない。 いや、それならそれでひとまずオットー辺りに定時に行わせプレシア自身は事態の鎮圧に向かえば良い。それでもどうにもならなければ10分遅れた事について簡単で良いからフォローを入れればある程度違和感は拭える筈だ。 それをせずに単純に10分遅れただけで何の変哲も無い放送をしたとなると、漠然と放送を聞くだけの何も考えない参加者はともかく知略に秀でた者達は容易にその異常さに気付くだろう。 考えられる事としてはオットーに放送を任せられない事態が発生したという可能性。つまり、主催側の内乱である。 だが、こういう解釈が出来るとなるとその内乱でプレシア自身にも何かが起こり――最悪退場した可能性もある。 そしてプレシアがいかにも健在であるかの様に見せる為、放送はプレシアに扮した者が行うという話だ。金居自身の世界に人間に擬態するワームの存在がある以上そういう可能性があっても不思議ではないだろう。 だが―― 「――何にしても現状すべき事に変わりはない」 結局の所、主催側で何かが起こったとしてもそれは想像の域を出ない。確定的な証拠が出ない以上断定は避けるべきだ。 それに仮に何かが起こっていたとしても自分優位な状況を作り出すため今後も当面は参加者同士を潰し合わせる方針に変わりはない。 そもそも主催側の事情がどうあれキングは何れ倒す敵である事に変わりはないし、参加者の中には障害となるものもいる。故に、 「あんたの望む通りに戦ってやる。もっとも俺なりのやり方ではあるがな――」 プレシアに聞こえる様にそう呟いた―― そんな中、1体のガジェットが金居の所に戻ってきた。前述の金居の指示に従うならば戻ってくる理由は―― 「……ほう」 ガジェットが持ってきたのは3つの道具だ。一見すると全て無用の長物に見える。しかし金居の目を惹くものがそこには確かにあった。 「まさかクラブのKが手に入るとはな」 その内の1つがアンデッドが封印されているラウズカード、それも金居やキング同様カテゴリーKのカードだ。 もっとも、金居が手に入れた所で別段使えるものではない。しかし自身の世界のものである以上捨て置く理由はない。故に金居はそれをデイパックに仕舞う。 「後の2つは……よくわからんな」 残りは宝石の様な球体と何かの首飾りだった。 使い道がわからない為、今の金居にとって有用な道具ではないが他の者にとってはそうとは言えない。 故に下手に利用されるのを避けるため自分の手元に置いておく分には問題はないだろう。そうかさばるものではないというのも理由にある。 そして用事を済ませたガジェットは再び金居の指示に従い北へ向かった。 「しかし、一体何処で手に入れたんだ? まぁどうでもいい話だがな」 金居自身知る由は無いが3つの道具はある場所から回収されたものだ。 それらは聖王のゆりかご玉座の間にあった。ガジェット達は北上しループを越えてゆりかごに辿り着いた。そしてその玉座の間にあった道具の中で使えると判断したものを回収したのだ。 これまでの話を読んだ方の中には玉座の間には他にも道具があったのではと疑問に思う者も数多いだろう。しかし結論を言えば他に使える道具を見つける事は出来なかった。 何故か? そもそも玉座の間には3人の参加者ルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ、フェイト・T・ハラオウンが所持していた道具があった。 だが、その後ヴィヴィオがキャロの遺体を完膚無きまでに破壊した際に力任せに攻撃を繰り返した。エネルにも匹敵する力を無尽蔵に加えればどうなるだろうか? その結末など考えるまでもない。その周囲にも破壊が及ぶのは当然の理。結論を言えば、そこに置かれていた道具の殆どは完膚無きまでに破壊された。 破壊を免れたのは惨劇の場から離れていた首飾り型のスバルのデバイスマッハキャリバー、破壊される事の無いラウズカード、本当に幸運にも被害を避ける事の出来た球体かいふくのマテリアぐらいだった。 余談だがフェイトの道具に関してはフェイトが事切れる前フェイトの手から離れていた。そのためフェイトの遺体自体は攻撃から免れたが道具に関しては破壊に巻き込まれている。なお、フェイトの遺体はその後ヴィヴィオによって何処かへ移送されている。 なお、マテリアにしてもマッハキャリバーにしても金居にとって未知のものである以上使用は不可能。当然だがマテリアの説明書きは攻撃に巻き込まれ消失している。 マッハキャリバーについてはマッハキャリバー自身がガジェット及び金居を敵と判断したため一切の応答を断っていた。 ルーテシアに利用されて持ち主のスバルを危険に巻き込んでしまった事もあり、もう二度と敵に利用されるつもりはなかった。利用されるぐらいならば壊された方がずっとマシだと考えている。 幸い金居は自身を知らない為、現状は何の変哲もない首飾りと思われている。それで十分だとマッハキャリバーは思考していた。 「さて、そろそろ動こうか――」 腹ごしらえも済みアジトへ向けて歩を進めようとした矢先、一発の銃声が響いた。無論方向はアジト方面である。 「どうやら俺が手を下すまでもなく争ってくれているようだな」 このタイミングならば内部に入り込み集団を瓦解させる事も襲撃して一網打尽する事も可能ではある。 しかし油断してはいけない、内部分裂の状況だからこそ襲撃を警戒する者もいるだろう。 「どうしたものか――選択肢は数多い――いや、俺が選ぶ道は1つか――」 【2日目 深夜】 【現在地 C-7密林】 【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒 【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~ 【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③) 【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ 【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック 【思考】 基本:プレシアの殺害。 1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。 【備考】 ※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。 ※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。 ※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。 ※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。 ※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。 ※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。 【全体の備考】 ※ガジェットドローンⅣ型×5@魔法少女リリカルなのはStrikerSがアジトより北にある各種施設に向かいました。以下の命令を受けています。 ・各種施設の探索及び破壊、確保した道具は金居の所へ持ち帰る。 ・施設に向かった参加者の殺害。 ※工場がガジェットにより破壊されています。 ※ゆりかご玉座の間に残っていた道具の殆どが使用不能になるまで破壊されています。もしかしたら何か使える物が残っているかもしれません。 ――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼等を照らしていた。 「ふっ、良い月だ」 キングはそう呟く。 「何か言ったか?」 「いや、別に」 アンジール・ヒューレーの問いかけをそう返したキングの心中は高揚していた。 月光はゲームの支配者である自分だけを照らしている。一方的に放り込まれ殺し合えと言われた時は良い気はしなかったが実際はどうだろうか? ゲームは幾つかの不測の事態があったものの概ね自分の思う通りに進んでいる。天も地も、そして全ての者達が自分の玩具であった。 月明かりは自分を祝福してくれると思えば良い気もするだろう。 E-9にある森林に2人はいた。D-2のスーパー跡地にいたはずの2人が何故ここにいるのか? そこで、少し時間を遡りつつ振り返っていこう。 そもそも2人はあの後逃走した天道となのはの追跡をしていた。逃走した方向に関しては戦闘時の立ち位置等からある程度予測出来た。その方向は西方向、故に2人はまず西へと向かった。 市街地の闇に消えた可能性も無いではなかったが敢えてその裏をかき、逆方向の平野へ向かった説もあるとキングは判断していた。 アンジールはそうではないが、キングにとってはここで2人を見失っても別段問題はない。只の戯れの1つ程度にしか思っていなかった。 結論から言えば2人を見つける事は出来なかったがその代わりにD-1に血痕をそれも比較的新しいものを見つけた。 「ふむ……」 「そんなものどうでも良いだろう、何もないなら市街地に戻るぞ」 「いや、そうでもないさ。何故こんな所に血痕が出来る?」 「ここで戦いが起こったからだろう?」 「アンジール、君はわざわざフィールドの端で戦ったりするか?」 「……そういう事か」 普通に考え参加者は人のいる市街地へ向かい当然戦いもそこで起こる。殺すにしろ組むにしろ参加者の足取りは端から中央、もしくは施設に向くのは当然の事だ。 だが、D-1はエリアの端にあり同時に周囲に施設はない。好き好んでここで戦いを起こす理由は皆無だ。しかもこの場所はD-1においても西側、ますますこの場所で戦う必然性に欠けるだろう。 「……試してみるか」 キングは更に西方向に足を進める。アンジールは何を考えているんだと思いつつ着いていくが――突然キングの姿が消えた。 「何?」 アンジールは慌てて追いかけた。そして気が付いたら景色が森に変わっていた。 「なるほど。プレシアの奴も面白い仕掛しやがって」 と、ゼロを演じる事も忘れ素の姿をキングはさらけ出していた。 「どういうことだ?」 「何、大したことじゃない。フィールドの端と端は繋がっているというだけの話だ」 一連の事から端と端は繋がっていてループするという事実に気が付いた。先の血痕の主もループしD-9へとワープしたのだろう。と、 「キング……お前主催者側の人間だったな、知らなかったのか?」 「私とてプレシアから全てを聞かされているわけじゃないさ。逃がさない仕掛をしているとは聞いていたがまさかループとは予想外だったという事さ」 「それでこれからどうする? 俺にとってはループなどどうでも良いんだが……」 「そうだな……状況から考えて2人もループを使って逃げた可能性が高い……」 キングは地図を見ながら 「よし、ホテルへ向かおうか。恐らくそこで参加者を集めているのだろう」 と、南方向へと足を進めていく。アンジールも後方のアジトを気に掛けながらもキングの後を着いていった。 「ところで――先程君は私をキングと呼んでいたが、私は君に名乗っていたかね?」 「……さっきの戦いで天道達がお前をそう呼んでいただろう。それを聞いただけだ」 「そういえばそうだったな。正直この姿の時はゼロとでも呼んで欲しいが……まぁいい」 その後、2人はF-9に辿り着いたがそこは崩壊したホテルと1人の半裸の男の死体しか残っていなかった。真面目な話半裸の男の死体など2人にとっては意味は無く、得る物も無い為早々にこの場から離れようとしたが、 「……あれは?」 キングは地面に何かを見つけその場所に向かった。そして 「これジョーカーのカードじゃん、何でこんな所に?」 とまたしてもゼロを演じるのを忘れカードを拾い上げる。それはハートのAのラウズカードだ。 「キン……ゼロ、そのカードがどうかしたのか?」 「いや、別に君に関係の無い事だ」 「それと同じようなカードなら向こうにもあるぞ」 と、少し離れた場所にも別のラウズカードが落ちているのが見える。 それらの位置から考え起こった事はある程度推測出来た。ホテルでジョーカーこと始は戦い激闘の末に封印された。その後、カードだけが風などで飛ばされて散っていったという事だ。 「アンジール、他にもカードが落ちているだろう。捜すぞ」 「ちょっと待て、こんなカードなどどうでも良いだろうが。何故……」 「おや、君は私に逆らえる立場だったかな? まぁ君が捜したくないというのなら別段構わ……」 「くっ……わかったそのカードを捜せば良いんだな?」 キングにとってラウズカードはある種最高の玩具、故にキングはそれを集めようとしていた。アンジールは渋々それに付き合いカード探索をした。 そして、キングの手元にはハートのA、3~10、9枚のラウズカードが集った。 「ふむ、ジョーカーとハートの2が無いのは些か妙だな……先に拾われたか?」 こうしてカード探しをしている内にE-9まで戻ったという事だ。どうやら風が北方向に吹いていたためカードも北方向に散らばりそれらを拾っていく内に北へ進んだという事だ。 「ゼロ、そういえばさっきからバックの中で何かが騒いでいるが何かあったのか?」 「ん? ああ、こいつか。只の人質だよ、連中を従わせる為のね」 なのはから奪ったフリードリヒはキングを警戒、いやむしろ嫌悪していた。キングのした事を踏まえるならばそれも当然の事である。 故に度々フリードは暴れだそうとしていたがデイパックに押し込まれていたが故に何も出来なかったのだ。 「人質程度で連中がお前に従うとは思えないが?」 「だが少なくとも私に刃向かう事は無いだろう」 「不意を突かれ奪還されるかも知れないだろうがな」 そう口にするアンジールの言葉を聞いてキングも少し考える。 確かに先の戦闘でカブトは自分から2つのデイパックを奪取している。2度も同じ事をされるとは思わないが警戒しておいて損はない。 「そうだな……ならコレは君が持っていたまえ」 と、フリードの入ったデイパックをアンジールに渡した。 「良いのか?」 「構わないさ、他にこれといった物は何もない」 「俺がコイツを殺すとは考えないのか?」 「ソレは参加者じゃない。殺した所で君にメリットは皆無だ。それに私の意に背いて殺したり逃がしたりなど君に出来るのか?」 「……もっともだな」 「もし私に何かがあればその時は……」 キングが追いつめられた時、アンジールがフリードに刃を突き付け連中を抑制しろ……その指示をアンジールは無言で頷いた。 連中もフリードをアンジールに渡しているとは思うまい。優位に立ったと思った所で絶望させる……そう考えキングは仮面の下で笑みを浮かべていた。 真面目な話、渡した理由の中にはデイパックの中で騒ぐフリードが正直疎ましく感じていたからというのもあった。 その最中、キングは地図を確認し次の目的地をスカリエッティのアジトに定めていた。恐らくホテルでの戦いを終えた者達はそこに向かっていると判断した。 「喜べアンジール、ようやく君の望む通り戦えるだろう」 強敵とも言うべきジョーカーもエネルももう退場済み、仮面ライダーであろうとも自分を倒す事は不可能。いざとなればフリードを人質にすればよい。 放送が10分遅れた事もキングにとってはどうでも良い話、主催側で何が起こっていようが自分はやりたい様にやるだけだ。 このゲームの支配者はプレシアではなく自分――そう考えキングは足を進めていた。 「(――全く、何をやっているんだろうな俺は……なぁセフィロス……)」 キングの後方でアンジールは空を見上げていた。 妹達を守る為に戦い続けたが結局何も守れず、生き返らせる為に戦おうとしても結局は主催関係者と語るゼロの手駒と化す状況、 「(これでは道化人形としか言いようがないな……)」 これまでずっと守る為に走り続けたアンジールにとってキングの指示に只従うという状況は結果として落ち着いて考える時間を与えてくれた。 結論から言えばアンジール自身、キングの言葉については疑心を抱いている。そう、キングがプレシアの手先であるという部分について嘘の可能性を疑っているという事だ。 前述の通りキングの名前を知っていた事に関しては斬りかかる直前天道及びなのはの口からキングの名前が出てきた事が耳に入ったからだ。それに対してキングが何と応えていたかまでは聞き取れてはいなかったが。 勿論、それだけでゼロがキングという名前だと判断出来るとは言い難い。しかし、少し時間が経過し考えている内にある事を思い出したのだ。 それはデパートのパソコンに残っていたメールのログ。そこにはキングに警戒しろという情報があった。その時点では特に気にしていなかったがそれを思い出した事を切欠にキングの存在とゼロを結びつける事が出来たのだ。 勿論、これだけならばキングが警戒すべき存在でしかない。だが、どうにもキングの言動を見る限り本当に主催者側の人間として働いている様な感じがしない。 突然口調が変わった事と言い、追跡すると言っておきながらカード集めに走った事といい、どうにも納得がいかない。悪く言えば遊んでいるとしか思えないという事だ。 しまいには主催側の人間といっておきながらループの事を知らなかったのも気になる。 そう、主催者側の人間という話自体が自分との戦いを避け同時に手駒にする為の口からでまかせという可能性に気付いたのだ。主催者側の人間でないならば従う通りは全く無い。 自分について妙に詳しかったのは別のカラクリがあったとすれば説明が付く。 それこそ当初考えた様にセフィロス辺りが自分の情報を売ったという説もあるし、自分がメールで情報を得たのと同様に何処かの施設で情報を得たという説もある。確かメールには施設を調べろという事も書かれていた筈なので情報を得られる可能性はある。 勿論、本当に主催者側の可能性もあるが仮にそうだとしても許せる存在ではない。 そもそもの話、クアットロを殺したのはキングではないのか? 仮に主催者側の人間であったとしても直接の下手人を許せる道理はない。 また、根本的な部分で引っかかる事がある。オットーが放送を行った件についてだ。勿論、これ自体はオットー達も主催者側にいるという事で説明が出来るだろう。 だが、一方でクアットロ達が参加者側にいる事が気になる。オットー達がいるならクアットロ達も主催者側の人間でなければおかしいだろう。 ではクアットロ達も主催者側の人間で参加者を攪乱するために送り込まれていたのか? いや、一度クアットロと接触した限りクアットロは自分を覚えていなかったしそういう役割を与えられていたという素振りも見せなかった。 勿論、記憶を操作した上でそういう役割を与えたという説もあるだろう。だが仮にそうだとするならばなおの事キングを許す事は出来ない。 キングは参加者の情報を与えられている一方、クアットロ達は記憶封鎖されている。何故こうも扱いに差があるのだ? キングや主催側に怒りを覚えずにはいられない。 そして最終的にはクアットロ達を斬り捨てた――オットー達もきっと主催者側に命を握られているのだろう。決して主催者達を許す事は出来ない。 だが現状では主催者の望み通り彼等に従い優勝を目指し妹達を助けるしか選択肢はない。それが真実という保証も無いが嘘だという確証も無い。故に今は従うしかないのだ。 同時にキングに対しても現状は従うしかない。キングに疑心があるとはいえこれまた確たる証拠が無い。もし本当に主催者側の人物だったら彼の機嫌を損ねれば最悪優勝しても願いは叶わない。 自分が状況に流されるだけの道化人形だという事は理解している。それでも願い事を叶えたいという想いだけは誰にも否定させやしない。 「(笑えよ――セフィロス――)」 友が今の自分を見てどう思っているかはわからない。妹達を守るために奴の大切な者――八神はやてを殺しておきながら結局何も守れなかった。 今の自分の姿はさぞかし滑稽に映っているだろう。 自虐はそこで終える。何にせよ目的地はある意味本拠地とも言うべきスカリエッティのアジト。全ての決着を着けるという意味ではある意味相応しい場所だ。 「(キング、今はお前に従ってやる。だが、クアットロを殺したお前を許すつもりはない――何れ落とし前だけは着けさせてもらう―― プレシア達もだ――妹達をこの殺し合いに巻き込んで只で済むと思うな――)」 敵意だけは決して消すことなく、道化へと堕ちてもなお兄としての僅かなプライドを残して戦士は行く―― 「そうだ――俺が選ぶ選択肢は――1つだ――」 「何か言ったか?」 「いや、別に」 【2日目 深夜】 【現在地 E-9】 【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状態】健康 【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3~10)、ボーナス支給品(未確認) 【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル 【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story 【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸 【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 【思考】 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。 1.アジトに向かう。 2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。 3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも? 4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。 5.はやての挑戦に乗ってやる。 【備考】 ※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。 ※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。 ※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。 ※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。 ※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。 ※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り 【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯 【道具】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。 1.キングと共に、参加者を殺す。 2.参加者の殲滅。 3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない) 4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合、キングを殺す。 5.主催者達を許すつもりはない。 【備考】 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。 ※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。 ※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。 ※キングが主催側の人間という事について疑いを持っています。 月明かりに照らされながら終末の光へと誘われるかの様に虫の王達は一点へと集う―― それは偶然か? それとも必然か? 何れにせよ運命の決着は近い―― 決めてとなる切札は王の手にあるのか―― あるいは―― Back 罪(状態票) 時系列順で読む Next Pain to Pain(前編) Back 罪(状態票) 投下順で読む Next Pain to Pain(前編) Back Ooze Garden(軟泥の庭) 金居 Next Pain to Pain(前編) Back 闇よりの使者 キング Next Pain to Pain(前編) Back 闇よりの使者 アンジール・ヒューレー Next Pain to Pain(前編)
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高町なのは:田村ゆかり フェイト・テスタロッサ:水樹奈々 ユーノ・スクライア:水橋かおり アリサ・バニングス:釘宮理恵 月村すずか:清水愛 クロノ・ハラオウン:高橋美香子 リンディ・ハラオウン:久川綾 エイミイ・リミエッタ:松岡由貴 アルフ:桑谷夏子 プレシア・テスタロッサ:五十嵐麗 クライド・ハラオウン:中田譲治 高町恭也:緑川光 高町美由希:白石涼子 高町士郎:一条和矢 高町桃子:天野エリカ 月村忍:松来未祐 ノエル・K・エーアリヒカイト:氷青 ファリン・K・エーアリヒカイト:谷井あすか 槙原院長:木下紗華 担任教師:前田ゆきえ 鮫島:前川健志 デバイス レイジングハート:Donna Burke バルディッシュ:Kevin J.England S2U:久川綾 第1話 塾の講師:平井啓二 第2話 女性:木下紗華 黒い魔物:平井啓二 犬獣:赤城進 第3話 相手チーム監督:平井啓二 キーパー:久川綾 マネージャー:谷井あすか 選手:高橋美佳子、木下紗華 第6話 広告塔の声:白石涼子 第7話 オペレーター:平井啓二、宇佐美貴之 第9話 生徒:木下紗華 第11話 武装局員:栗山浩一、鈴木貴征 作品一覧 ま行
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リリカル遊戯王GX 第二話 魔法とデュエルと謎の敵なの! 「保健室が無事なのは不幸中の幸いだったわね」 保険医である鮎川は十代の体に聴診器を当てながら呟いた。 十代とオブライエン以外のメンバーは生徒たちを体育館へ集めている、 二人はこの異世界に飛ばされる前に酷く消耗していた。 デス・デュエル――デュエルをするたびに、身に付けさせられたデスリングにその闘気を吸い取られてしまう恐ろしいデュエル、 十代はそんなデュエルを何度も繰り返すはめになっていたのだ。 最後にデュエルをした時、この世界に飛ばされる直前の事を十代は思い出す。 「あのオレンジの人影……あいつが何かをしたんだとは思うけど……」 「考えるのは後よ。それにしても、困ったわね」 「鮎川先生?」 「保健室のベッド、2つしかないのよ」 すでにここのベッドには先客がいた。 一人はオブライエン、崩落する瓦礫から身を呈して十代を助けた時の怪我で今は寝込んでいる、 そしてもう一人は万丈目 準、黒いコートを着た彼もまた、デス・デュエルの犠牲者の一人だ。 鮎川が悩んでいると、万丈目は突然目覚めてベッドから降りる。 「俺はもういい、貴様が眠れ」 「万丈目、大丈夫なのか?」 「サンダー、貴様のような腑抜けと一緒にするな。……ん!?」 万丈目は自分が寝ていたベッドに目を向け声を上げる。 そこにはどうにも気持ち悪い小さなモンスターが三匹存在していた。 「あら、兄貴お目覚めぇ?」 ―おじゃまイエロー― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 「なんだ貴様ら! 何故実体化している!?」 「俺達に聞かれてもなぁ」 ―おじゃまグリーン― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 「どう? 実体化したら俺達も結構イケてない?」 ―おじゃまブラック― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 心の底から嫌そうな顔をする万丈目だったが、三匹のおじゃま達は楽しそうにその周囲を飛び回る。 はねクリボーまでそれに交ざり、万丈目はさらに驚きを深くする。 「お前の精霊まで!? いったいどういうことだ!」 「外はもっと大変な事になってるドン」 「剣山、みんなは大丈夫だったか?」 「デス・デュエルで倒れていた人も含めて、百人以上の生徒がここに飛ばされてるみたいザウルス。今頃丸藤先輩たちがみんなと話してる頃だドン」 その頃体育館ではちょっとした騒ぎになっていた。 無理もない、ここに来るまでの間に砂漠と化した外の世界を見てしまったのだ、恐怖と不安でいっぱいだろう。 「みんな、落ちついてくれ!」 「落ちつけるわけないだろ! いったい何が起こったんだよ!」 「小惑星が落ちて海が全部蒸発したとか……」 「俺はモンスターを見たぞ! 冗談じゃない、こんなとこいられるかよ!」 ヨハン達の声を聞かず、パニックになった何人かの生徒が外に向かって走り出すが、 いつの間にか出入り口にいたワニ(ジムが背負っていた奴である)によって阻まれる。 「Stop! こういう時は冷静さを欠いた者から倒れていくぞ!」 「でも、これからどうするの? 食糧とか、寝るとことか……」 小柄な少女、早乙女 レイが不安そうにヨハン達へ訪ねる。 彼女は中学一年になったばかりなのだ、デュエルでかなりの腕を持つことから高等部であるアカデミアに特別に編入されたが、 まだ13歳の少女にこの状況はかなり厳しいだろう。 ヨハン達もこの問いにはすぐに答えられなかったが、助け舟が出される。 「食糧に関しては大丈夫だよ、食糧保管庫とかは無事だったからね」 「トメさん!」 「寝床は毛布とかが用意されてるノーネ、人数分以上あるから平気なノーネ」 食堂のおばちゃんとして親しまれているトメさんと、 どこからか大量の毛布を持ってきていたクロノスの言葉に生徒たちは僅かに希望を見出す。 だが、続く会話にまたも落胆してしまった。 「トメさん、食糧はどれぐらいもちそうなんですか?」 「そうだねぇ……節約すれば、一週間はもつかね」 「一週間か……」 ヨハン達は「一週間猶予ができた」と考えるが、 他の生徒たちは「一週間しか時間がない」と考えてしまい、また騒ぎが大きくなっていく。 ヨハン達は再びこの騒ぎを止めるため動くこととなるのだった。 「……あら?」 「明日香さん? どうしたの?」 「そういえば、アモンがいないわ・・・…」 普段からほとんど使われず、こんな状況では誰一人として見向きもしない図書室に一人、アモンはいた。 明らかに人間の物ではない腕が入ったカプセルを目立たない場所に置いて、一人笑みを浮かべる。 「……ん?」 ふと外の様子を見ると、見覚えのない複数の人間がアカデミアに向かって歩いてくるのが見えた。 アモンはしばらく様子を窺い、モンスターの類ではない事を確かめると体育館へと向かう。 アモンに教えられてヨハン達はアカデミアに近づいているという者達を見に外へ出る。 大半が見慣れぬ格好をした女性だったが、意の一番にボロボロの格好の男が大きく手を振りながらこちらへ駈け出した。 「おーい! みんな、俺だー!」 「あれ、この声どこかで聞いた覚えが……」 「確か……誰だっけドン?」 「二人とも、同じ寮の人なんだから思い出してあげて……み、えっと、あれ?」 翔に剣山に明日香まで、誰も男の名前を思いだせないのを見てその男はその場に座り込んでいじけ始める。 「ふっ、いいんだ、わかってさ……どうせ半年以上いなくても誰も気にせずにいたんだ……」 「み、三沢さんしっかり!」 「きっと度忘れしちゃってるだけですって、た、多分……」 慌てて回りの女性――なのは達が男、三沢を励ます。 翔達も名前を聞いてようやく思い出したようで、「ああ、そういえば最近見なかったような……」と頷いて納得する。 「ヘイ、スモールガール、あの三沢って奴はいじめにでもあってるのか?」 「私も会ったことないから……って、その呼び方何だか嫌なんだけど」 ジムとレイが話してるのを横目に、ヨハンは三沢やなのは達に歩み寄る。 ……誤解の無いように言っておくが、遊戯王GXの主人公はヨハンではなく今保健室で寝ている十代なのであしからず。 「俺はヨハン、このデュエルアカデミアの留学生だ。あなたたちは?」 「私たちは時空管理局の魔道士です、えと、自己紹介は後々ということで、とりあえず中に入れてもらって構いませんか?」 十代やオブライエンも話を聞きたい、ということだったのと、 体育館に行ってまた無用な混乱を起こすのを避けるために、ヨハン達は保健室へと集まっていた。 さすがに全員は入れないので、剣山やジム、フリードなどのスペースを取る者は外にいる。 「えっと、その時空管理局っていうのが何なのかはわかったけど……」 なのは達から説明を受け、明日香は困ったように呟く。 確かに今までも異世界だったり、カードゲームをするだけで命を奪われかけたりと非常識な生活だったが、 真正面から堂々よ「魔法使いです」などと言われても信じにくい。 モンスターは信じたじゃないか、という声が上がりそうだが、やはり自分たちと同じ姿かどうか、というのは偏見ではあるが大きいのだ。 「皆さんは三沢さんがこの世界に飛ばされた事故とは違う理由でこの世界に飛ばされたんですよね?」 「はい、あくまで予測でしかないですが」 「そうか……帰る手段は無いんだな」 ヨハンとのやり取りを聞いていた三沢が項垂れる。 彼はシュタイン博士という量子力学の研究をしている人に憧れ、 半年以上前からずっとその研究をしていたらしい(その間誰一人としていないことに気づかなかったのは伏せてある) ある日、実験中の事故によってこの世界に飛ばされてしまいモンスター達から逃げ回っていたそうだ。 「シュタイン博士は、この世には12の次元世界があるとおっしゃっていたが……実際にはもっと無数にあるんだな」 「でも、個人レベルでそこまで見つけるなんて並大抵のレベルじゃないわ、天才なんて言葉じゃ足りないかも」 ティアナの言葉に三沢はどこか嬉しそうな表情になる、自分の憧れの人間が褒められるのはやはり嬉しいのだろう。 それまで黙っていた翔が、恐る恐るなのはへと尋ねる。 「あの……もしかして僕ら、無断で別の世界へ飛んじゃった、ってことで何か罪になったりするんですか?」 「ああ、そんなことは無いですよ、悪意があったというならともかく、皆さんは被害者ですし」 「それにこの世界はまだ管理局の管理下にありません。私たちに強制力はないですよ」 なのはとフェイトの言葉に一同胸を撫で下ろす、 やはりどこか不安だったのだろう、こんな見知らぬ世界で犯罪者扱いはごめんである。 「本局に連絡して皆さんの元の世界を探してもらいますね」 「元の世界が見つかったら、俺たち帰れるのか!?」 「よ、よかったぁ、一時はどうなる事かと……」 十代達は安堵感から一気に緊張が解けるが、 なのは達は逆に表情を強張らせる。 万丈目がそれに気づき、聞きたくないと思いつつも問いかける。 「お、おい……どうした?」 「……フェイトちゃん」 「ううん、私もダメ、エリオ達は?」 「僕たちもダメです……」 「私もです」 「本局との通信が、通じない……」 呆然と呟いたスバルに、十代たちに再び絶望感が蘇ってしまう。 「ど、どういう事だ!?」 「わ、わからない、念話をしようとするとノイズが……ジャミング?」 「みんな、少し離れて」 なのはの言葉に従い、全員が保健室から出る、 十代とオブライエンも大分回復してきたようだ。 なのはの足元に魔方陣が現れ、十代達は「おお!」と驚き――乾いた音を立てて魔方陣が砕け散る。 「な、何が起こったザウルス?」 「ダメ……転移魔法もキャンセルされる」 「そ、それじゃもしかして、私たちも帰れない……?」 「そうなる、ね……」 『んなっ……!』 なのは達の会話から、十代達は希望が断たれた事を知る。 一度期待を持たされてから叩き落とされる方が答えるものだ、翔は沈み込んでしまっているし、レイに至っては不安で顔が青くなってしまっている。 だがヨハンやアモン、オブライエンに明日香といった冷静なメンバーもショックは受けていたもののまだ思考を巡らせる余裕は残っていた。 「と、とにかく、そういうことなら俺達は同じ立場ってことだな」 「そうなるとまずいな、食糧の配分等を考えるとまた騒ぎになるかも……」 「あ、食糧なら大丈夫です」 「数日分なら持ってきていますし、その気になれば一週間ぐらいは水だけでも」 「なるほど、未知の場所へ向かうなら必須のスキルだな」 「そ、そういうものなの?」 食事の心配はしなくていい、というのは助かるが、だからといって状況が変わった訳ではない。 ゴール直前で振り出しに戻ってしまったようなものだ。 「体育館のメンバーにも人数が増えたことを伝えないとな……」 「いつモンスターが来るかわからん、単独行動は控えさせるべきだ」 「俺は全員でいるなど御免だぞ! 窮屈でかなわん!」 全員で話し合い、数人のグループ毎に行動することを決定する。 なのは達は色々試し、念話を始めとした通信手段と転移魔法のみが使えなくなっていて、他の攻撃・防御呪文などは使える事が判明した。 十代達は自力で自分の世界へ帰る方法を、なのは達は魔法を封じている存在を探すことをそれぞれの方針とする。 ――時は過ぎ、夜 「……?」 「えっと、ごめんマルタン君、ちょっと着いて来て欲しいんだけど……」 毛布に包まり寝ていた男子生徒、加納 マルタンは突然レイに起こされゆっくりと立ち上がる。 「どうしたの……?」 「や、えっとそのー……とにかく一緒に来て!」 レイは何故か頬を染めながら無理矢理どこかへ連れて行こうとする。 マルタンは首を捻りながらついて行くのだった。 「馬鹿な!?」 自らの組んだグループから密かに離れ、アモンは図書室へ来て驚愕の声を上げた。 カプセルに入っていたはずの腕がなくなっていたのだ、無論一人でに出ていくわけがない――とは言いきれなかった。 「馬鹿な、俺以外を選んだというのか……!?」 アモンは歯を食いしばり、とても十代達の前にいた時からは想像できない怒りの表情に変わっていた。 オレンジ色の人影、そうとしか形容できない「それ」は跳ぶようにアカデミアの廊下を進んでいた。 『闇……心に大きな闇を持つ者……』 突然現れた魔法使い達にもそれぞれ闇はあったが、どれも光に抑え込まれてとても憑けそうにない。 とりあえず外部との連絡手段は断ってやった、あいつらがいるだけなら構わないが「彼」まで連れていかれては困るのだ。 その影は更に進んでいき、二つの人影を発見する。 『見つけた……』 影はスピードをあげ、人影――レイとマルタンへと近づく、そして…… 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」 レイの悲鳴が夜のアカデミアに響き渡った。 続く なのは「本局との連絡は途絶え、十代君達の元の世界の人達も手だしができない……」 十代「それでも諦めないぜ! デュエルも人生も、最後の1ターンまで分からないんだ!」 次回 リリカル遊戯王GX 第三話 飛べスバル! ペガサスに乗る魔法拳士! 十代「こ、こんなデュエルもありなのかぁ!?」 十代「今回の最強カードは、って今回はデュエルしてないんだったか」 なのは「なら、今回はこれで!」 機動六課 フィールドカード 「スターズ」「ライトニング」「ロングアーチ」の名前がつくカードの攻撃力と防御力が300ポイントアップ そのカードが破壊された場合、デッキからカードを一枚除外することで破壊を無効にする 十代「次回もよろしくな!」 なのは「ガッチャ! なんちゃって♪」 前へ 目次へ 次へ
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仮面ライダーリリカル電王sts外伝第五話 「ある日のシャーリー」 「う、う~ん!終わったぁ」 一人の女性、シャリオ・フィニーノは書類を完成させ、くつろいでいた。 彼女は自分が作り上げたシステムの書類を作っていたのだ。 「終わったのか…。コーヒーだ飲むといい」 「あ、ありがとうございます、アインさん」 銀髪に黒い帽子を深くかぶった女性、アインからコーヒーを受け取りシャーリーは再び書類に目を向けた。 「それにしてもすごい。画期的なシステムです。これならイマジンも…」 「ああ…。元よりその為のシステムだからな」 「そう言えば、アインさん」 「なんだ?」 「アインさんは起動後の姿は知らないんですよね?」 「そうだな…。実際に見たことはないからな」 「じゃあ、見ます?」 「良いのか?なら、見せてくれ」 「御安いごようです!」 そう言うとシャーリーはキーボードを操作し複数のモニターを出した。 「まずはスバルから。スバルのはややスピード特化してます」 「どんなアーマーなんだ?」 「スバルのは胸部、脚部、肩部に赤色のアーマーが装着されて鉢巻きも赤くなります。 後、これは全てに共通するんですけど顔に仮面はつけてないんです」 「何故なんだ?」 「だって仮面つけたら可愛くないじゃないですか」 「それだけの理由か…」 「後、泳げません♪」 「良いのかそれ…」 「次はエリオ」 (流したな…、確実に) 「エリオのは青色の亀の甲羅の様なアーマーが装着されて、顔の横にアンテナがセットされるんです」 「なんだそのアンテナは?」 「デンソナーと言って言わばソナーシステムですよ」 「小型のレーダーと言う訳か」 「後、このアーマーだけ背部にデンスクリューと言う物があって泳げるんです。ただ…」 「ただ?」 「キック力と防御力以外スペックは、最弱なんです」 「おい、良いのか?」 「いいんですよ。ほら、可愛い男の子がボロボロになるのが良いんですよ♪」 (段々、危なくなってるのは気のせいだ、気のせい。) 「次はキャロ。キャロの場合は金のアーマーが装着されて、帽子が黄色になるんです。 この帽子は自動で飛んだりするんですよ。後…」 「後?何があるんだ?」 「帽子にはリイン曹長が乗り込んでて空を飛んだり盾になったりするんです♪」 「どこのスーパーロボットだ!どこの!」 「て、言うのは嘘で本当は防御力とパワーが高いんです」 (まともなのがないのか) 「で、ラストがティアナ。これは紫色のアーマーでキック力と起動力が最も高いんですよ」 「最後が一番まともだな…」 「あと、ターゲットスコープも搭載してるんですよ。後はキャストオフをつければ…」 「待て、それ以上は色んな意味で待て!」 「性能が…」 「少し、静かにしろ。いいな!!」 「は、ハイッ!!」 有無を言わさぬ口調でシャーリーを黙らせるアイン。 そこへ、ドアをノックする音と共に声が響いた。 「シャーリー、差し入れ」 「入っていいよ!」 シャーリーが返事をすると一人の人、いやイマジンが入って来た。 黒いローブを身に纏い黄金のカラスの様な顔立ちのイマジンであった。 「はい、どうぞ。差し入れのおにぎり。さあ、召し上がれ」 「いつもありがとう、デネブ!アムッ、美味しい~っ!!」 「ささ、アインもどうぞ」 「いただこう」 そう言って一口おにぎりを食べ、アインはこう洩らした。 「美味しいな…」 彼女は感慨にふけっていた。昔を、思い出し…。 (思えば、十年前まではこうやって食べることもなかったな…) 「あれからもう十年、か…」 「どうしたんですか?気分でも…」 「大丈夫、少し考えこんでいただけだ」 「なら、いいんですけど…」 感慨にふけっていたアインにシャーリーは心配し声をかけてきた。 アインが答えると少し安心したようにそれ以上は聞いてこなかった。 ちなみに余談だがアーマーのデザインはシャマルとシャーリーがノリノリでデザインしたらしい。 目次へ